VVVF名鑑

東洋電機製造

概要

 東洋電機製造は、国内のVVVFメーカーの中でも特に、PWM制御において"ほぼ同じ"パターンを多くの車種へと展開している会社と言えるでしょう(その逆で、一つ一つの車種に対して最も細かくパターンを変えているのが東芝でしょうね)。そのおかげか、例えば「東洋GTO後期型」や「東洋2レベルIGBT」といえば、ある程度決まりきった音が想像できるのではないでしょうか。
 東洋製VVVFの大きな特徴の一つとして、毎回同じインバータ周波数で非同期変調と同期変調が切り替わる、というものがあります(ただし、「東洋GTO初期型」=「Y2G-1」シリーズとして本ページにて分類するものは除く)。これは、例えばE233系の三菱IGBTでは毎回非同期→同期に切り替わるタイミングが架線電圧等によって変わりますが、東洋製のインバータではそれがあり得ないということです。「東洋GTO後期型」(ここでは「Y2G-3」シリーズとして後ほど分類します)の場合、このタイミングとして設定されているのはインバータ周波数が加速時は27.5Hzのとき、減速時は24Hzのときです。また、2レベルIGBTについてはこのタイミングが年代ごとに何回か変更されています(よって分類基準として用いました)。
 分類は以下のようにさせていただきました。なお、一部ハイブリッドSiC採用車種もございますが、IGBTと同じパターンが適用されているため、ここではIGBTと同じカテゴリに含んでおります。

    2レベルGTO
  • Y2G-1
  • Y2G-2
  • Y2G-3A
  • Y2G-3B
  • Y2G-3C
  • Y2G-3D
    3レベルIGBT
  • Y3I-1
    2レベル(IGBT・ハイブリッドSiC)
  • Y2I-1A
  • Y2I-1B
  • Y2I-1C
  • Y2I-1D

 2レベルGTOについては、切替パターンによって末尾の数字を変えています。その中でも、「Y2G-3」シリーズに関しては、非同期変調の細かな違いによってさらに4種類に分類し、A~Dのアルファベットを付与しました。また、2レベルIGBTについては前述のように非同期~同期の切替タイミングによって4種類に分類しました。いずれもある程度時系列に沿った分類となっております。なお、当ページを含む「Analysis」カテゴリのページは、主要なパターンの分析を目的とするため、箱根登山鉄道3000形のような例外的な音については扱っておりませんのでご了承ください。

2レベルGTO

最終更新日:2022.12.31

Y2G-1

音声ファイル(阪急8300系(GTO・前期タイプ))

解析画面(阪急8300系(GTO・前期タイプ))

加速
減速
パターン 非同期-21P-15P-9P-5P-3P-1P(減速時は非同期なし)
登場時期 1986年頃
該当車種 函館市電3000形、豊鉄モ780形、富山地鉄デ8000形、阪急7300系7310号車(消滅)阪急8300系(GTO前期車、消滅)、広電3800形、広電3900形、広電3950形
該当すると思われる車種(未調査) 鹿児島市電2110系列
該当すると思われる車種(調査不可能) 函館市電2000形(GTO・消滅)、東急7600系(消滅)、東急7700系(GTOソフト未更新時代、消滅)、相鉄5000系(消滅)、京成3200形VVVF試験車(消滅)

 いわゆる「東洋GTO初期型」と呼ばれているタイプですが、路面電車に関しては1998年までこのタイプのみの採用が続きました。加速時は180Hzの非同期キャリアをしばらく保った後、6回パルスモードを切り替えて1パルスに到達します。また、減速時は21パルスのままインバータ周波数が約6Hzまで下がり、以降は回生失効までこの周波数が保持されるようです。この時期の他社は軒並み"45-27-15-9-5-3-1"というパターン(あるいはこれに準ずるパターン)を採用していましたが、東洋は21パルスを用いていることが特筆すべき点ですね。

Y2G-2

音声ファイル(東急7700系)

解析画面(東急7700系)

加速
減速
パターン 非同期-15P-9P-5P-3P-1P
登場時期 1990年頃
該当車種 東急7700系(GTO・ソフト更新車)

 後にも先にも東急(現養老鉄道)7700系のみで聴くことのできる音です。非同期領域が延長され、Y2G-1における21パルスの部分もカバーするようになりました。その非同期変調は後に登場するY2G-3シリーズの「後期型」タイプ同様キャリア周波数を拡散しながら上昇し、途中一瞬だけその拡散が途絶える部分があります。ただし、全体的には「後期型」よりも低いキャリア周波数(235Hz~370Hz)であり、長さも短いです。
 このように、上記Y2G-1と後述のY2G-3Cの間のような切替パターンから「東洋GTO過渡期型」と呼ばれることが多いですが、7700系がこの音に更新されたのはブレーキの改修が行われた1990年頃と考えられるため、実は「後期型」よりも後に登場した可能性が高いです。

Y2G-3A

音声ファイル(京阪7000系)

解析画面(京阪7000系)

加速
減速
パターン: 非同期-9P-5P-3P-広域3P-1P
登場時期 1989年頃
該当車種 京阪7000系(元6000系6014Fからの編入車含む)・7200系・9000系

 「東洋GTO後期型」と呼ばれるもののうち比較的最初期に登場したタイプで、京阪のみで聴くことができます。Y2G-2に比べると、さらに15パルスの部分まで非同期領域が延長され、また3パルスの後半部分が広域3パルスに置き換えられています。この特徴を持つものを当サイトではY2G-3シリーズとして扱いますが、このうち非同期変調の拡散が途切れる箇所がなく、後半でキャリア周波数が360Hz一定になるものをY2G-3Aとして分類します。

Y2G-3B

音声ファイル(東急1000系(1C8M))

解析画面(東急1000系(1C8M))

加速
減速
パターン 非同期-9P-5P-3P-広域3P-1P
登場時期 1989年頃
該当車種 東急1000系(GTO、デハ1214~1224以外)京成3700形・北総7300形(ソフト未更新車)・千葉ニュータウン鉄道9100形
該当すると思われる車種(調査不可能) 京急1500形1701編成(ソフト未更新時代、消滅)

 「東洋GTO後期型」と呼ばれるもののうち、こちらも比較的最初期に登場したタイプです。このタイプは、途中で非同期キャリアの拡散が途切れる箇所がないという特徴はY2G-3Aと共通ですが、最後まで一定にはならず、加速時は380Hzまで上がり減速時は370Hzから下がります。
 このタイプの音を発する車両のうち最古である東急1001Fと、YG2-3Aタイプの音を発する車両のうち最古である京阪旧6014Fの試験車両とでは、前者が1988年、後者が1989年と登場時期が前後します。しかし、東急1001Fの方は、登場当初はYG2-1タイプで数か月後にソフトが更新されたという情報があり、さらにこれ以降登場する車種の非同期キャリアの上げ方は、しばらくこちらのものを踏襲することとなるため、このような順番に整理しました。

Y2G-3C

音声ファイル(京成3700形(ソフト更新車))

解析画面(京成3700形(ソフト更新車))

加速
減速

 「東洋GTO後期型」と呼ばれるもののうち、非同期キャリアが加速時は380Hzまで上がり減速時は370Hzから下がり、途中拡散が途切れる箇所があるものが該当します。つまりYG2-3Bに拡散のない箇所を加えた形であり、実際にYG2-3Bからソフト更新された車種もあります。この音を発する車両の走る範囲の広さや、音の特徴から、「東洋GTO後期型」の中でもっともオーソドックスなものと言えるでしょうね。

Y2G-3D

音声ファイル(京王1000系)

※加速と減速は元々別ファイルのものです。

解析画面(京王1000系)

加速
減速
パターン 非同期-9P-5P-3P-広域3P-1P
登場時期 1992年頃
該当車種 JR東日本E127系、京急600形(180kW車)京王1000系(消滅)、東武20050系・20070系・9050系、名鉄3500系
該当すると思われる車種(調査不可能) JR四国8000系試作車(消滅)、相鉄9000系(機器更新前・消滅)

 「東洋GTO後期型」と呼ばれるものの中でも、最後の方に登場したタイプです。基本的にはY2G-3Cに準じており、拡散の途切れる箇所のある非同期キャリアが用いられていますが、上昇量が抑えられ、また9パルスがやや長く取られています。具体的には非同期キャリアの最大値が加速時は365Hz、減速時は345Hzに抑えられています。よく見ると、Y2G-3Cにあった、非同期領域終端部付近のキャリア周波数の上昇が緩やかになる箇所がないですね。

3レベルIGBT

最終更新日:2022.12.31

Y3I-1

音声ファイル(京阪800系)

解析画面(京阪800系)

加速
減速
パターン 非同期(ユニポーラ)-1P
登場時期 1994年頃
該当車種 京阪800系
該当すると思われる車種(調査不可能) 東急7700系7915F(消滅)

 GTOや2レベルIGBTは似たようなパターンが広範囲で採用されている東洋ですが、3レベルIGBTは採用例が非常に少なく、現在も搭載しているのは京阪800系のみです。1000Hzの非同期変調(ユニポーラ変調のみ)が続いた後、同期変調に移行します。

2レベル(IGBT・ハイブリッドSiC)

最終更新日:2022.12.31

Y2I-1A

音声ファイル(京王1000系)

解析画面(京王1000系)

加速
減速
パターン 非同期-9P-1P
登場時期 2002年頃
該当車種 JR東日本205系5000番台(日本国内では消滅)、京王1000系3・4次車未更新車、京王1000系デハ1114(消滅)[b]、京成3000形(ソフト未更新車・前期タイプ)、JR西日本321系・225系、京阪10000系(生え抜き・ソフト未更新車)、京阪10000系(生え抜き・ソフト更新車)[a]、京福モボ2001形、JR九州303系[a]、伊予鉄モハ2100形、長崎電軌3000形
該当すると思われる車種(未調査) JR西日本125系、JR西日本287系、阪急9300系(9300F~9302F)
該当すると思われる車種(調査不可能) 東京メトロ05系05-535号車(消滅)[a]

[a]非同期キャリアが1055Hz以外のもの
[b]6極モーター採用、長嶌義彰氏の動画より

 東洋2レベルIGBTのうち、最初に導入されたタイプです。非同期(2レベルIGBTにしてはかなり短め)-9P-1Pと推移し、また減速時は比較的高いインバータ周波数から9Pに移行するのが大きな特徴となっています。東洋2レベルIGBTのデフォルトの非同期キャリアは1050Hz(ただしこのY2I-1Aのみ約1055Hz)のようですが、ここで紹介するどのタイプにも例外はあるようです。最初に紹介するこのY2I-1Aは、非同期~同期の切替時のインバータ周波数が、加速時は約32.9Hz、減速時は約30.2Hzとなっています。京成・阪急・京阪では、2000年代前半はY2I-1A、2000年代後半は次に紹介するY2I-1Bが当時新造していた車両で採用されていた一方で、JR西日本では2010年代以降もY2I-1Aのまま導入が続いていました。また、京王、京成では非同期~同期の切替タイミングを変えないまま、後に電気停止ブレーキが導入されました(京成はさらに後のソフト更新で切替タイミングを変更)。東洋2レベルIGBTの電気停止ブレーキは、非同期変調の音量が減衰していった後に再び大きくなる特徴があります。ただしすべてに当てはまるわけではないようで、音量の再増大がないものの停止寸前まで電制が続く車種もあれば、音量が増大した後即空制のみに切り替わる車種もあります。

Y2I-1B

音声ファイル(京急1500形)

解析画面(京急1500形)

加速
減速
パターン 非同期-9P-1P
登場時期 2005~6年頃
該当車種 JR東日本253系1000番台[a]、京急1500形(東洋IGBT車)京急新1000形(東洋IGBT車)京急2100形(更新車)京成3000形(ソフト未更新車・後期タイプ)京成3000形(ソフト更新車(その2))新京成N800形京成AE形[a]、江ノ電500形、都電9000形、都電8800形、都電8500形、都電8900形、都電7700形、名鉄3500系更新車[a]、名古屋市交通局6050形、名古屋市交通局N3000形、阪急9300系(9303F~9310F)、阪急7300系7327号車[a][b]、京阪3000系・13000系[a]、10000系(編入車・元7200系)[a]、Osaka Metro 200系[a]、伊予鉄3000系[a]

[a]非同期キャリアが1050Hz以外のもの
[b]6極モーター採用

 東洋2レベルIGBTのうち、2000年代後半以降に導入されたタイプです。このタイプでは非同期~同期切替時のインバータ周波数が加速時は約33.5Hz、減速時は約33Hzに引き伸ばされており、特に減速時はY2I-1Aとの違いがわかりやすいです。また、Y2I-1Aでは基本的に約1055Hzの非同期キャリアが用いられていましたが、Y2I-1B以降では1050Hzへとわずかに引き下げられました。

Y2I-1C

音声ファイル(京成3000形(ソフト更新車(その1)))

解析画面(京成3000形(ソフト更新車(その1)))

加速
減速
パターン 非同期-9P-1P
登場時期 2014年頃
該当車種 阪急7300系・8300系更新車[a][b]、静鉄A3000形、E129系[a]、京成3000形ハイブリッドSiC試験車(3003-7・8、消滅)[hs][a]、京成3000形(ソフト更新車(その1))、JR四国7200系[a][b][c]、京王1000系3・4次車更新車[a][b][c]
該当すると思われる車種(調査不可能) 阪急1300系[a][b]

[hs]ハイブリッドSiC採用
[a]非同期キャリアが1050Hz以外のもの
[b]6極モーター採用
[c]減速時も約36.5Hzで非同期に切り替わるもの

 2010年代になってから登場したタイプです。このタイプでは非同期~同期の切替タイミングが加速時は約36.5Hz、減速時は約36Hzとなっています。京成3000形ファミリーの場合、先に登場したのはハイブリッドSiC 試験車の方で、従来車は後に非同期領域が引き伸ばされました。

Y2I-1D

音声ファイル(京成3100形)

解析画面(京成3100形)

加速
減速
パターン 非同期-9P-1P
登場時期 2018年
該当車種 MRTJ1000形[i][a]、函館市電3000形(機器更新車)[hs][a]、京急新1000形(1890番台)[hs]、京成3100形[hs]、アルピコ交通20100形[i]、福鉄880形[hs][a][r]
該当すると思われる車種(未調査) 函館市電2000形(機器更新車)[hs][a]

素子タイプ:[hs]ハイブリッドSiC [i]IGBT
[a]非同期キャリアが1050Hz以外のもの
[r]ランダム変調適用

 2018年頃に登場したタイプです。非同期~同期切替時のインバータ周波数について、加速時はY2I-1Cと同じであるものの、減速時は1世代前のY2I-1Bのタイミングに戻っています。当初このタイプは両者のMixとして分類していましたが、近年同様のパターンのものが増えてきたため東洋の新たなトレンドと認識し、Y2I-1Dとして区別することにしました。時代が時代なだけあってハイブリッドSiC車が多いですが、Si-IGBTの車種も該当するものはあります。