VVVF名鑑

JR東日本

傾向と対策

 JR東日本のVVVF車(一般形電車)は、典型的なステンレス車らしいリスニングスポットが多いです。1台車に2個あるモーターについて、車体中心側搭載品直上で録音した場合は音量も大きい反面他機器からのノイズも入りやすく、連結面側搭載品直上で録音した場合は他機器からのノイズは多少抑えられる一方で軌道由来のノイズが少々入りやすくなる印象があります。いずれの箇所で録音した場合も、特定周波数のノイズを除去すれば綺麗な音源にはなるはずです。このようにリスニングスポットにあまりくせがないので、首都圏のコイル録音初心者であればまずはJR東日本の車両で録音の練習を重ねてみるといいかもしれませんね。

E231系

最終更新日:2020.5.10

 1998年、IGBT-VVVFやTIMS等当時の新技術を盛り込んだ車両として209系950番台が試作されました。従来のGTO-VVVFに代わり、日立製2レベルIGBT-VVVFと三菱製3レベルIGBT-VVVFを1ユニットずつ搭載し、中央・総武線での運用が始まりました。E231系としての量産は2000年からスタートし、通勤タイプには三菱製3レベルIGBT-VVVFが、近郊タイプには日立製2レベルIGBT-VVVFが結果的に採用される形となりました。なお、209系950番台は量産車の登場に伴いのちにE231系900番台に改番されています。
 2015年から始まった機器更新は、E235系登場による転配属とも関連する形でハイペースで行われたため、2022年12月現在900・0・500番台のオリジナルVVVF車はすでに消滅しています。この更新においても、通勤タイプは三菱製・近郊タイプは日立製の装置を採用し、いずれも新形式の2レベルIGBTとなっています。

900番台未更新車(三菱3レベルIGBT・消滅)

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF SC60(1C4M2群)
三菱3レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 1998年
パターン 加速時:非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-3P-1P
減速時:1P-3P-非同期(ユニポーラ)
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 B901編成のモハE231/E230-902ユニットで採用された、三菱3レベルIGBTのVVVF音です。同時期の他車種搭載の三菱3レベルIGBT-VVVFと比較すると、非同期変調のキャリア周波数が低いところ(インバータ周波数2Hz固定時約197Hz)から始まり、拡散幅も大きくとられています。このため、この系列特有の音として認識されていますが、(特に加速時について)パターン自体は普遍的なものに感じられます。(変調モード切替時のキャリア周波数が毎回変わるところも含め。以下0番台、500番台ともこのときのキャリア周波数を明記していますがあくまで参考程度のものです。)
 量産車と比べると、加速時の非同期変調の領域が長く、キャリア周波数は1000Hzまで上昇する設定となっています。その分、3パルスは短めです。一方で減速時の非同期領域ではダイポーラ変調へと切り替わらないという特徴がありますが、ランダム変調の設定は加速時とほぼ同じようですね(量産車ではなぜか拡散幅が小さくなっています)。
 900番台は2020年に中央・総武線の運用から撤退し、現在は0番台とともに武蔵野線で運用されています。この転用の際に機器更新が行われ、機器類が0番台(更新車)と共通化されたため、現在この音を聞くことはできません。

0番台未更新車(消滅)

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF SC60A/B(1C4M2群)
三菱3レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 2000年
パターン 加速時:非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-3P-1P
減速時:1P-3P-非同期(ユニポーラ)
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 0番台(更新前)のVVVF音です。900番台のものと比べると加速時は非同期が880Hzまでしか上昇しなくなり、減速時はキャリア周波数の拡散幅が小さくなりました。また、両ケースとも非同期が短くなり3パルスが長くなっています。E231系といえばこの音、という方も多いかと思われますが、こちらも三鷹・松戸ともに未更新車は消滅してしまったようです。
 減速時の1パルスに注目すると、900番台では変調率が不安定でしたが、0番台では比較的安定して最大を保つ傾向があったようですね。500番台ではまた不安定な挙動となっていましたが…。

500番台未更新車

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF SC60B(1C4M2群)
三菱3レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 2002年
パターン 加速時:非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-3P-1P
減速時:1P-3P-非同期(ユニポーラ)
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 500番台(未更新車)のVVVF音です。500番台も現在全編成機器更新済ですが、同様の音は純電気ブレーキ化後の相鉄10000系、加速度が異なるものも含めると800番台や都営10-300型前期車でも聴くことができます。加速時こそ0番台からの変化はないですが、減速時は純電気ブレーキ採用により非同期変調のキャリア周波数が169Hzまで下がるようになりました…日立によくある200Hzと比べてもかなり低いですよね。

E233系

最終更新日:2022.12.31

 2006年に、E231系をベースに機器の二重化・サービスの向上などを行った車両として登場しました。首都圏の多くの線区へと投入され、2021年現在は3000両以上が在籍しています。
 主電動機はE531系で実績のあるMT75形を搭載し、歯車比もE531系の6.06を踏襲しています。また、制御装置はE231系同様、通勤タイプには三菱原設計のもの、近郊タイプには日立製のものを使用しています。ただし、前者について「原設計」と表記したのは、東洋電機製造製の装置も混在しているからです。両者はJR西日本のWPC15系列同様、フィルタリアクトルの形状で識別が可能です。これら共作案件についてJR西日本車は「東洋の音」、E233系は「三菱の音」が採用された点は興味深いですね。

通勤タイプ

音声ファイル(1000番台)

解析画面(1000番台)

加速
減速

音声ファイル(2000番台)

解析画面(2000番台)

加速
減速
VVVF SC85/85A/85B(1C4M2群)
三菱2レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 2006年
パターン 非同期-3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 三菱原設計の制御装置(SC85系列)を搭載する、通勤タイプのVVVF音です。3000番台以外の全番台と、相鉄11000系・12000系はすべてこのような音になります。ただし、番台ごとに加減速度が異なっており、掲載している1000番台(起動加速度2.5km/h/s)と2000番台(同3.3km/h/s)では受ける印象が変わるかと思います。
 音については、この時期に三菱が広く採用していた、中心のキャリア周波数が一定である非同期変調(標準的な拡散幅)の後、3パルス→1パルスへと遷移するパターンとなっています。E233系に関しては、加速時も減速時も、3パルスの領域は短めとなっています。このタイプの三菱IGBTでキャリア平均値が750Hzのものは、JR東日本の車両、およびそれらをベースとした車両(小田急4000形含め)以外では実は採用例が少ないです(E233系自体の数が多すぎるのであまり実感が湧きませんが)。

近郊タイプ

音声ファイル(SC90)

解析画面(SC90)

加速
減速

音声ファイル(SC98)

解析画面(SC98)

加速
減速
VVVF SC90/SC98(1C4M2群)
日立2レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 2007年
パターン H2I-3 非同期-9P-広域3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 日立製制御装置(SC90・SC98)を搭載する、近郊タイプ(3000番台)のVVVF音です。初期2編成(それぞれ2007年・2010年に登場)がSC90形、2011年以降に登場したそれ以外の編成がSC98形を搭載しており、装置の形状が大幅に異なっています。一方でVVVF音について、掲載している2ファイルは録音時の環境の違いによりスペクトルの明瞭度の差が表れてはいますが、パターン自体に違いはないようですね(減速時の非同期変調の切り替わり直後の高さは毎回変動します)。先に登場したE531系と比較すると、非同期変調がわずかに短くなりました(940Hzに到達する前に同期変調へと切り替わります)。また、9パルスの過変調だけで広域3パルスを作らず、1つ前の世代(H2I-2)同様専用のPWMをVVVF領域終端で用いるようにしたため、1パルスに切り替わる直前で変調率が頭打ちになる問題が解消されています(以降、新パルスモード(HOP変調)が展開されるまで9P→広域3Pの繋がりが日立の標準的なパターンとなります)。

E131系

最終更新日:2022.12.31

 郊外や地方など、比較的短編成の線区向けの標準的な車両として2020年に登場しました。前面はE129系同様貫通構造ですが、車体はE235系がベースとなり、片側4扉となっています。また、足回りについてはハイブリッドSiCを適用したVVVFが採用されています。房総地区向け車両を皮切りに様々な路線への導入が続いており、一部の車両はブレーキチョッパも搭載しています。

0番台

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF SC123/123A/126(1C2M2群)、SC127(1C2M1群)
日立2レベルIGBT(ハイブリッドSiC)(DC1500V・IM用)
登場時期 2020年
パターン H2I-4 非同期-9P-5P-広域3P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 E131系のVVVF音です。パターンは近年の日立のSiC車の傾向が表れているものとなっており、525Hz一定を保った後に緩やかにキャリア周波数が上昇する非同期変調に、9パルス(新種)→5パルス(新種)→3パルスが続くといったものです。このパターンは神戸市交6000形と同じですが、E131系の非同期の場合加速時はキャリア周波数がより高いところまで上昇し、一方の減速時はより低いところから下降するようですね。