VVVF名鑑

東京メトロ

傾向と対策

 東京メトロの現役車両はアルミ車のみであるため、営団時代に直流電動機を搭載して製造された点検蓋付きの車両以外、残念ながら収録難易度が非常に高いです(車両によっては、ごく稀にドア付近で他ノイズに干渉されず収録できるレベル)。2023年10月現在、東京メトロ線内で現役の点検蓋付きの車両は8000系、02系(PMSM車のみ残存)と05系の一部になります。1台車につき点検蓋は4箇所ありますが、場所によって他ノイズの入り方にばらつきがあったり、PMSM車は1C1Mゆえ車体内側寄りのものは干渉が避けられなかったりと、最適な場所を探るためのハードルは高めです。それでも、点検蓋のない車両よりは遥かに明瞭な音を拾うことはできます。
 東京メトロ線内からは引退しましたが、6000系・7000系はインドネシア・ジャカルタのKAI Commuterの路線で、03系は長野電鉄で、それぞれ引退時と変わらない音のまま活躍しており、録音することができます。

6000系・7000系

最終更新日:2023.10.1

 6000系は千代田線用に、7000系は有楽町線用に登場した車両で、両者で多くの点が共通化されています。6000系は1968年に1次試作車、1969年に2次試作車が登場し、アルミ車体や電機子チョッパ制御の検証を行った後に1970年から量産が始まりました。一方の7000系は1974年に登場し、こちらは改良版であるAVFチョッパ制御が採用されました。いずれも1980年代後半~1990年代前半まで増備が続き、度重なる仕様変更があったもののすべて直流電動機のまま新製されました。また、機器更新が始まった当初もGTOチョッパ装置への換装であり、主電動機は継続して使用されていました。しかし1994年度よりIGBT-VVVFへの換装が始まり、主電動機も交流電動機に置き換えられています。VVVF化は大別すると3パターンあり、それぞれ
(1) 3レベルIGBT・160kW (1994年度~)
(2) 2レベルIGBT・160kW (1999年度~)
(3) 2レベルIGBT・165kW (2003年度~)
となります。いずれのVVVFも三菱製・日立製の両者があり、(2)が7000系のみに存在する以外は、6000系・7000系とも共通の機器仕様となっています。しかし、各々の直通先における誘導障害対策のためか、同一機器でも6000系仕様と7000系仕様でPWMが異なるものも複数あります。
 2022年4月以降、6000系・7000系とも東京メトロ線内からは撤退していますが、6000系のVVVF車については一部車両がジャカルタに譲渡されているため、現地で録音することが可能です。

三菱3レベルIGBT(6000系仕様)

解析画面

加速
減速
VVVF MAP-178-15V53(1C2M4群)
三菱3レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 1995年
パターン 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 点検蓋
範囲: ★★
音質: ★★

 VVVF化を伴うB修繕の中で、一番最初に登場した三菱3レベルIGBT-VVVF搭載車の音です。ここで用いられているPWMは、他の三菱製3レベルIGBT-VVVFのものとは異なる特徴をいくつか持っています。まず、非同期領域においてはランダム変調が用いられていません。このタイプ(6000系仕様)はキャリア周波数400Hz一定で始動し、その間はまるで日立GTO後期型のような響きになります。その後、キャリア周波数が上昇しますが、瞬時的なブレがこのフェーズで何度か生じています。なお、ユニポーラ変調への切替タイミングについては三菱らしく変動し、加速時はキャリア一定部になることもあれば上昇部に差し掛かった後になることもあります(減速時はキャリア一定部のみ)。そして、同期モードの種類こそ3パルス・1パルスと標準的ですが、変調率飛ばしを複数箇所で行っているため、より多くの箇所でモード切替を行っているかのような印象を受けます。
 当初は6000系・7000系ともMAP-178-15V53搭載車両はこの音を発していましたが、後に7000系のみ次に紹介するタイプの音に変更されています。また、日本時代に品質の良い音源を収録できなかったため、ジャカルタ・KAI譲渡後に本音源を収録いたしました。収録編成は雨天だったためか、やや慎重なノッチ操作となっていました。

三菱3レベルIGBT(7000系仕様)

解析画面

加速
減速
VVVF MAP-178-15V53(1C2M4群)
三菱3レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 1998年頃?
パターン 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 点検蓋
範囲: ★★
音質: ★★

 前述の通り、三菱3レベルIGBT-VVVF搭載車のうち、7000系に関してはこちらの音に変更されました。非同期キャリアに関して、一定部は500Hzとなり、またその後の上昇部も全体的により高い範囲を使用するようになっています。また、3パルスから1パルスにかけての、VVVF領域終端付近での変調率の変化の仕方にも差があります。
 7000系だけ音が変わった理由は、おそらく西武線直通の際の誘導障害対策と思われます。ただし、7402号の片台車のみ、最後まで6000系仕様のままで残っていました。その後10000系の増備により3レベルIGBT-VVVF搭載車は廃車となり、このタイプは姿を消したはずが、今度はなぜか6000系のうち6301号および6418号(いずれも片台車)で復活しました。廃車車両から予備品として確保した7000系のROMが転用されたのかもしれません…。収録したのはジャカルタ・KAI譲渡後の6118F(6418号)で、1つ前の6000系仕様と同じ編成であるため、加速の仕方も同様です。管理人がモハラジオ録音を始めたタイミングでは、すでにこのタイプは日本では聴けなくなっていました。

日立3レベルIGBT(6000系仕様)

解析画面

加速
減速
VVVF VFI-HR4820C(1C2M4群)
日立3レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 1996年
パターン H3I-2 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-1P
収録のしやすさ タイプ: 点検蓋
範囲: ★★
音質: ★★

 B修車のうち、日立3レベルIGBT-VVVFを搭載した6000系の音です。三菱3レベル車と違い、こちらは日立と特定しやすい特徴を基本的には残しており、例えばキャリア周波数が500Hz一定部から始動し、WaveTone上で「上に凸」の曲線を描いて上昇する点は223系2000番台とも共通です。一方で、上昇部が比較的変調率の高い領域となっている点、上昇後のキャリア周波数が上昇前の2倍ではない点、そして立ち上げ/立ち下げ時に非同期キャリアが変化しない点など、よく観察するとクセのある設定となっています。
 こちらの音源は日本で収録したものです。なお、7000系にも同じVFI-HR4820Cを搭載した編成が2本ありましたが、こちらも直通先の関係か6000系とは音が異なっていたようです。具体的には、500Hz一定部の後の上昇部が7000系では確認できず、その後の非同期キャリアが不明瞭となっています。これらの編成は残念ながらモハラジオが製品化されるよりも数年前に廃車となってしまったため、PWM設定を確認することはもはや叶いません。