VVVF名鑑

京阪電車

傾向と対策

 京阪線の車両の場合、アルミ製であるにも関わらずモーター直上でコイルでの録音が容易にできます。アルミ車特有の篭り気味な音質になるものの、リスニングスポットの位置がステンレス車とほぼ同様となるケースは相当珍しいです。VVVFは東洋製のものを一貫して採用し続けていて、IGBT車もGTO車も減速時CVVF領域を捉えられる区間は意外と少ないので録音時は忍耐が必要かもしれません。
 京津線の車両(800系)は併用軌道を走る都合上普通鋼製で、こちらもモーター直上でコイルでの録音が可能です。こちらも減速時CVVF領域が現れる区間は限られており、走行線区を全区間乗車したときは地下鉄東西線の烏丸御池~二条城くらいしかありませんでした。

7000系・7200系・9000系

最終更新日:2021.2.13

 1989年2月、6000系6014Fのうち一部車両がVVVF試験車として竣工しました。こちらに続く形で、量産形式として同年9月に7000系が登場しています(後に上記6000系VVVF試験車は7000系に編入)。28両が登場した後、1995年からはマイナーチェンジ版の7200系へと移行しました。正面デザインは丸みを帯びたものとなり、内装の配色も変更されました。そして1997年、セミクロスシートを備えた特急用の9000系が登場しました。いずれもほぼ同一の走行機器を搭載しています。
 9000系は後にロングシート化され、他車と共通運用を組むこととなりました。また、2015年から7000系・9000系の8→7連化が行われ、抜かれた9000系の中間車(4両)は電装解除、7200系の中間車(2両)はIGBT化され、いずれも10000系に編入されています。

7000系

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF RG622A/B(1C8M)
東洋2レベルGTO(DC1500V・4極IM用)
登場時期 1989年
パターン Y2G-3A 非同期-9P-5P-3P-広域3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★

 7000系で収録したVVVF音です。「東洋GTO後期型」と呼ばれるものでは比較的最初期に登場したタイプです。ほぼ同時期に登場した東急1000系(1C8M対応車)同様、非同期変調時に周波数の拡散が途切れる箇所はありません。一方で非同期後半でキャリア周波数が360Hz一定になるという、このVVVFにしか現れない特徴があります。加速時が特に顕著ですが、減速時もこのキャリア一定の区間が一瞬あり、他の「東洋GTO後期型」との違いを感じることができます。

800系

最終更新日:2022.12.31

 800系は京都市営地下鉄東西線直通開始に向け、1997年に京津線に登場しました。4両編成を組み、併用軌道・急勾配・急曲線・地下鉄での走行に対応しています。足回りには東急7915Fに続き東洋3レベルIGBT-VVVFが用いられています(その後東洋は2レベルIGBT-VVVFの製造に移行したため、採用例はこの二者に留まりました)。1C8MとされるVVVFですが、850形にパワーユニット2つ搭載したVVVFを1台搭載し、先頭の800形の制御も行っていることから実際は1C4M2群構成であると思われます。

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF RG662A(1C4M2群?)
東洋3レベルIGBT(DC1500V・4極IM用)
登場時期 1997年
パターン Y3I-1 非同期(ユニポーラ)-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 800系のVVVF音です。PWMのパターン自体は1000Hz一定の非同期(ユニポーラ変調のみ)から1パルスに切り替わるだけという、3レベルIGBTにしてはシンプルなものとなっています。ただし、この1パルスモードは比較的高い速度で、かつ比較的高い加減速度のときにおいてようやく変調率が最大値(CVVF領域)となるようで、特に減速時は捉えることが難しかったです。CVVF領域に達すると途端に音量が大きくなることが特徴的ですね。
 ちなみに、スペクトル(WaveTone画面上)には現れないですが起動直前にピッ!という音が入ります。当初はATOスイッチによるものと思っていましたが、非ATO区間でも同様の音が鳴っていたので元からVVVF側で設定されているものと考えられますね。

3000系・13000系

最終更新日:2022.12.31

 京阪3000系は2008年、中之島線開業および快速急行運転開始用に登場しました。車内は転換クロスシートとされ、足回りは10000系に引き続き東洋電機製造の2レベルIGBTが採用されました。ただし、MT比は1:1から3M5Tへと引き下げられています。2011年からは特急を中心に使われるようになり、さらに2021年からはプレミアムシートが連結されるようになりました。
 上記の3000系をベースに、汎用性の高い通勤車として2012年に登場したのが13000系です。こちらは4連・7連・8連(暫定編成)で運用され、2021年には京阪としては久々となる6連が登場しました。

13000系

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF RG6004A(1C2M2群)
東洋2レベルIGBT(DC1500V・4極IM用)
登場時期 2008年
パターン Y2I-1B 非同期-9P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★

 13000系のVVVF音です(3000系も同じです)。先に登場した10000系(ソフト未更新車)と異なり、非同期変調のキャリア周波数は525Hzへと引き下げられました。MT比の低下により主電動機および素子の負荷が増えたことへの対策かもしれません。また、この時期の東洋2レベルIGBTらしく(Y2I-1B)、非同期変調が少し長くなっています。一方で同時期導入されつつあった電気停止ブレーキは採用されなかったようで、停止間際は完全に空気ブレーキへと切り替わっています。

3051号(モーター試験車?(消滅)・音声ファイルのみ)

音声ファイル

VVVF RG6004A(1C2M2群)
東洋2レベルIGBT(DC1500V・4極IM用)
登場時期 2015年
パターン Y2I-1B 非同期-9P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★

 3001Fの3051号は2015年夏頃~2020年夏頃にかけて走行音が変わっていました。おそらく試験用の主電動機が搭載されていたものと思われます。普通に聴くと非同期変調の長さが長くなっているように感じられましたが、コイルで録音した音に関して非同期と同期の切替時のインバータ周波数に変更はありませんでした。おそらくすべりのより小さいモーターを使用したことで、同期変調に切り替わるときのインバータ周波数が同じでも、モーターの回転数が高くなったことがこの現象の原因であると思われます。
 なお、PWMに変化がないこと、そしてあくまで切替タイミングの調査が目的であったため低速域の音しか録音していなかったことを踏まえ、解析画像の方は割愛させていただきます。