VVVF名鑑

METRA・NICTD

傾向と対策

 METRA・NICTDはともに米国シカゴ近郊の通勤鉄道です。METRAは複数の通勤路線を持っていますが、うちミレニアム駅を発着する路線のみが電化されており、ハイライナーと呼ばれる2階建ての電車が用いられています。一方のNICTDは、一部区間にて併用軌道を走行することで知られているサウスショアー線の運行を行なっています。こちらもミレニアム駅を発着しており、途中までMETRA電車線と線路を共有しています(そしてどちらも日本でおなじみの直流1500Vの電化方式となっています)。
 どちらの路線も車両はステンレス製であり、クロスシートですが自由席となっているため日本のステンレス車と同じ感覚で(モーター直上の床で)録音が可能です。ただし、サウスショアー線の平屋建て車両は、アメリカでは珍しく付随車が編成に含まれているケースが多いため、乗り間違えないようにしたいです(パンタグラフも搭載しているため外観上での区別は難しいが、妻部の形状および車番(200番台)から判別可能)。また、車内検札の邪魔にならないよう工夫が必要です。そして、もちろんハイライナーは1階を選びましょう。ハイライナーはNICTD所属車もあり、サウスショアー線でも運用されていますが、少数派となっています。

NICTD 平屋建て車両

最終更新日:2022.12.31

 1982年に、当時サウスショアー線の運行を行なっていたCSS&SB鉄道向けに日車が製造した車両です。後に事業を引き継いだNICTDが所有することになります。初期の0番台(2桁車)は当初は抵抗制御でしたが、1999年以降に全車VVVFインバータに改造され、その後の増備車(100番台)は最初からVVVF制御で製造されました。「傾向と対策」に書いたように、4両編成以上の場合は付随車(200番台)を連結していることが多いです。また、0番台のうちの初期ロットは4列シートになっていますが、増備車からは5列シートとなり、真ん中の列に座れば検札を妨げることなくモーター直上での録音が可能です。

音声ファイル

解析画面

加速
減速

音声ファイル(加速・15Pなし)

解析画面

加速
VVVF 形式不明(1C4M)
東芝2レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 1999年
パターン 非同期-15P(まれに出現しない)-9P-5P-3P-広域3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 サウスショアー線の平屋建て車両(0番台・100番台)のVVVF音です。209系910番台(ソフト更新車)に非常に似た音となっており、東芝GTOの一種のように感じられますが、なんと実はIGBTとのことです[1]。韓国に回生時のみ同様のパターンの車種があったり、非同期の設定こそ違えど同期変調に同じパターンを用いている207系1000番台更新車が存在したりと、東芝はIGBTでもGTO時代のPWMを踏襲するケースが一部車種でみられますね。
 特筆すべき点としては、広域3パルスが用いられていることがまず挙げられます。これはGTOでもJR四国8000系[2]等一部車種でみられる特徴となっていますが、極めて少数派です。また、加速時のみ9パルス内でスペクトルの変化が不連続になっている箇所があります。そして、15パルスに滑らかに繋がるように、非同期終端のインバータ周波数が約24.333(=365/15)Hzに固定されていて、減速時も最後は加速時同様に非同期に切り替わります。これは209系910番台でも一番わかりやすい特徴ですね。ただし、架線電圧が低いときは本来15P→9Pに切り替わる変調率に非同期が達してしまうため、2番目のファイルのように15パルスが出現せず、そのまま9パルスに切り替わってしまうようです。非同期の終端をインバータ周波数依存とすることで、確かに滑らかなPWM切替えが可能になりますが、万能ではないようですね…。

[1]https://www.toshiba.co.jp/sis/railwaysystem/jp/about/history.htmより
[2]常磐ラジオ氏の動画より

Highliner Ⅱ

最終更新日:2019.8.4

 ハイライナーⅡは、それまでメトラ電車線で運用されていた初代ハイライナーを置き換えるために、2005年に登場しました。車体は日車製で、先にMETRAの他線区で用いられていた、「ギャラリーカー」と呼ばれる中央部が吹き抜けとなっている2階建て客車に準じた構造となっています。オールMの2両固定編成であり、東芝製IGBT-VVVFに全閉外扇型主電動機が組み合わさっています。後にNICTD向けにもこのハイライナーⅡが製造されましたが、METRA向けとほぼ共通設計となっています。

METRA所属車

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF 形式不明(1C4M)
東芝2レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 2005年
パターン 加速時:非同期-15P-広域3P-1P
減速時:1P-広域3P-9P-非同期
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 ハイライナーⅡのVVVF音です。サウスショアー線の平屋建て車両と同じく東芝IGBTですが、こちらはいかにもという音になります。ただし、用いられている同期多パルスモードが加減速で異なっており、加速時は日本でもよくみられる15パルス、減速時はなんと9パルス(日本だとこれがあるのは北急8000形更新車くらい?)を用いています。これは、非同期のランダム変調の範囲の設定が上限が600Hz(E501系や東急7000系1000系1500番台と同じ)、下限が400Hzから600Hzまで速度に応じて変化する形となっていて、滑らかに繋がってはいないものの、切替点付近でキャリア周波数が600Hzにより近くなるものを設定した結果だと思われます。