横浜市交通局
傾向と対策
横浜市営地下鉄は第三軌条方式のブルーラインと、リニア地下鉄方式のグリーンラインの2路線があります。ブルーラインは第三軌条らしく、録音時は集電装置由来と思われる擦れるような音が入りますが、ある程度軽減される位置もあるので、同じ車両内で何箇所か試してみてベストスポットを探るのが良いでしょう。車端部にのみ点検蓋がありますが、ない箇所でも音は拾えます。グリーンラインもリニア地下鉄らしく拾えるVVVF音の音量が大小を繰り返しますが、こちらは場所による録音品質の差は少ないです。
ブルーラインでは4000形による3000A形の置き換えが予定されている一方で、3000R・S形に対しては機器更新が行われ(既に完了)、3000Nにも今後実施される予定です。
グリーンラインの10000形は登場時より何度かPWMパターンの変更があったようで、これまでに複数タイプの音が確認されています。また、2022年より6連化用の中間車が登場していますが、既存車に対する機器更新も行われています。
3000A形
最終更新日:2022.12.31
3000A形はあざみ野延伸時の増備用として1992年に登場しました。足回りには三菱製GTO-VVVFが採用され、1C4M2群構成となっています。6連8本が製造され、その後機器更新もなく営業を続けていましたが、今後4000形への置き換えが決まっており、数年以内の引退が予定されています。
VVVF | MAP-148-75V32(1C4M2群) 三菱2レベルGTO(DC1500V・4極IM用) |
登場時期 | 1992年 |
パターン | 非同期-9P-5P-3P-1P |
収録のしやすさ |
タイプ: 標準もしくは点検蓋 範囲: ★★★ 音質: ★★★ |
3000A形のVVVF音です。非同期変調の前半部でキャリア周波数が上昇し、後半部で一定になる、この時期の三菱GTOらしいパターンが採用されています。非同期変調時のキャリア周波数一定部は360Hz(スペクトル拡散なし)、同期変調時のパルスモードも9→5→3→1と変化するため、このタイプの三菱GTOの中では最もオーソドックスなものといっても良さそうですね。特徴的な点があるとすれば、このタイプが用いられている他の車種はインバータ周波数・キャリア周波数固定始動が多い一方、こちらは両者ともいきなり上昇する、といったことくらいでしょうか。
3000N・R・S形
最終更新日:2020.9.28
3000N形は1999年の湘南台延伸時の増備車として登場しました。基本的な車体構造は3000A形を踏襲しているものの前面形状が変更され、VVVFもGTOからIGBTへと変わっています。この3000N形は6連7本が製造されました。
その後、路線のワンマン運転化に備え、1000形・2000形を置き換えるために3000R/S形が2004年より登場しました。3000R形は完全な新製車となっているのに対し、3000S形は置き換え対象の2000形がまだ比較的若かったため、一部機器を流用しての製造となりました。なお主回路についてはどちらも3000N形ベースのものが用いられています。両者は外観上、帯色での区別が可能となっています。
3000R・S形については2017年よりリニューアルが始まり、2022年現在全編成への施工が完了しています。この際VVVFもハイブリッドSiC適用のものへと換装され[1]、3000V形・4000形と似た外観のものが新たに採用されています。一方、磁励音は更新前と区別のつきにくいものとなっていますが、コイルで録音した結果相違点がいくつか確認されています。
機器未更新車
VVVF | MAP-148-75V77/77A(1C4M2群) 三菱2レベルIGBT(DC750V・4極IM用) |
登場時期 | 1999年(当パターン:2004年) |
パターン | 非同期-3P-1P |
収録のしやすさ |
タイプ: 標準もしくは点検蓋 範囲: ★★★ 音質: ★★★ |
3000N・R・S形の、登場時より搭載しているVVVFインバータの音です。2022年現在はR/S形の更新が完了していることからN形でのみ録音が可能な音となっています。
所謂「竜巻インバータ」と呼ばれるものの一種で、非同期前半部でキャリア周波数が一気に上昇します。加速時はある程度の速度域まで低いキャリア周波数を一定に保ってから上昇させる一方、純電気ブレーキが用いられている減速時は高いキャリア周波数を粘り強く保ち、最後の最後で一気に落とします。なお、3000N形は当初純電気ブレーキに対応しておらず、R形の登場後に改造が行われたようです。
機器更新車
VVVF | 形式不明(1C4M2群) 三菱2レベルIGBT(ハイブリッドSiC)(DC750V・4極IM用) |
登場時期 | 2017年 |
パターン | 非同期-3P-1P |
収録のしやすさ |
タイプ: 標準もしくは点検蓋 範囲: ★★★ 音質: ★★★ |
3000R・S形の、リニューアル時より搭載しているVVVFインバータの音です。上記更新前のパターンと非常に似通っているため区別がつきづらいですが、コイルで録音することで明確に違いが現れました。具体的には、①起動直後に速度推定部と思われる箇所がある(→主電動機のセンサレス化済み?)②非同期に対する3パルスの割合が増える、の2点で区別が可能です。
ハイブリッドSiCを採用し、3000V形・4000形と似た外観の装置となっていますが、同車のように三菱のSiC専用のパターンではなく、更新前のPWMに似せたのは何かしらの事情がありそうですね。
10000形
最終更新日:2021.7.7
2008年開業のグリーンライン用の車両として登場しました。まず2006年に先行編成である10011F・10021Fが登場し、入念な試運転が行われました。2007年になると量産編成である10031F~10151Fが増備され、前照灯やアクセントカラー(ブルー→グリーン)等の変更が盛り込まれました(先行車も後にアクセントカラーを変更)。開業からしばらくは15本体制でしたが、2014年に10161F・10171Fの2本が増備されました。こちらの2本ではフルカラーLEDが採用された他、車体側面の淡いグリーン→濃いグリーンへのグラデーションが上下逆向きとなりました。
現在は複数種類の音が確認されており、本ページでは3種類に分類して掲載しています。ただし、1番目と2番目は個体差による違いの可能性もあります。3番目のものに関しては明確にPWMの変更が行われていますが、機器更新との関連は不明であり、既存装置に対するソフト変更も行われている可能性があります。また、どのタイプも(比較的速度が高いにも関わらず)減速時に1パルスが現れないケースがありますが、ブレーキの強さ等運転時の条件が関係しているのかもしれません。
その1
音声ファイル(加速)
音声ファイル(減速)
VVVF | MAP-144-15V154(1C2M2群) 三菱2レベルIGBT(DC1500V・LIM用) |
登場時期 | 2006年 |
パターン | 非同期-3P-1P |
収録のしやすさ |
タイプ: 点検蓋 範囲: ★★ 音質: ★★ |
10000形のVVVF音3種のうちの1種で、こちらは10021F(先行車)のデータです。
音の特徴としては一番基本形ともいえそうなもので、非同期キャリアが加速時は一定(275Hz)→上昇→一定(645Hz)、減速時はこの逆に変化するという、典型的な「竜巻インバータ」の挙動を示します。ブルーラインの3000N/R/S形と比較すると起動時のキャリア周波数は若干低いみたいですね。もしかしたら登場当初はすべてこちらの音であったのかもしれませんね。
2022年12月現在、10151Fまではすべて「その3」に変わっています。一方、2次車の10171Fのみ、現在もこの音が確認できます。
その2
VVVF | MAP-144-15V154(1C2M2群) 三菱2レベルIGBT(DC1500V・LIM用) |
登場時期 | 2006年(当パターン:2014年頃?) |
パターン | 非同期-3P-1P |
収録のしやすさ |
タイプ: 点検蓋 範囲: ★★ 音質: ★★ |
2022年12月現在、2次車の10161Fで確認できる音です。基本は「その1」とほぼ同じですが、加速時のみ275Hz→645Hzに変化する際一度音が下がり、「谷間」のようなものがある設定となっています。一方減速時はこの「谷間」はなく、「その1」とほぼ同じパターンとなります。
一応、「その1」とは別種類として掲載していますが、VVVF側の設定ではなく、10161F固有の個体差によってこのような音になった可能性はあります。というのも、同じ2次車の10171F(「その1」)の挙動をみると、減速時ですが、音が上がったり上がらなかったりと、不安定な挙動を示すことがあるからです。リニアモーターの低速時の特性故かもしれませんが、このような事象を発生させるメカニズムが気になります。
その3(機器更新車?)
VVVF | MAP-144-15V154/154B(増結用中間車)[1](1C2M2群) 三菱2レベルIGBT(DC1500V・LIM用) |
登場時期 | 2020年? |
パターン | 加速時:非同期-3P-1P 減速時:1P-3P-非同期 |
収録のしやすさ |
タイプ: 点検蓋 範囲: ★★ 音質: ★★ |
[1]青ォォ氏より情報提供
10000形のVVVF音3種のうちの1種で、これは10081F(リニューアル車)のデータです。筐体に変化は見られなかったものの(辛うじて確認が可能なセンター南駅入線時での判断ですが)、横浜市交通局の計画通りであれば換装後の装置である可能性が高いです(3000R/S形のようにSiCが採用されているかは不明)。一見上記「その1」同様、275Hzから645Hzに変化するという挙動に違いがないように見えますが、よく見ると「その1」では比較的連続してキャリア周波数が変化しているのに対し「その3」では離散的に(階段状に)変化しています。これは、新京成8900形(GTO)と京急1500/600形(三菱GTO・120kW車)を比較したときの違いといえばもう少しイメージがしやすいかもしれません。その後急速にこのタイプへの変更が進められ、2022年12月現在2次車以外は(増結車含めて)すべてこの音となっています。この中には3色LED車も含まれており、仮に装置換装が行先表示器と同時施行であれば換装前の装置にも新しいPWMが採用されたということになります。残念ながらグリーンラインは装置銘板を撮影できる箇所がないため、事の真相はわからないままですね。
3000V形・4000形
最終更新日:2023.2.19
3000V形は2016年に登場しました。車体構造は3000R・S形を基本的には引き継いでいますが、随所随所で最新技術が取り入れられ、足回りにはハイブリッドSiC適用VVVFが新たに採用されました(主電動機も近年の三菱製全閉4極IMのような唸りを上げるものとなりましたが、こちらはどうやら開放型のままのようです)。
3000V形は当初1編成が導入され、更に3000A形置き換え用に7本が増備される計画がありましたが、こちらは4000形に形式変更のうえ川崎車両で製造されることになりました。車体デザインも変わり、それまでのブロック工法ではなくなりましたが、足回りの仕様は3000V形から大幅な変更はなく、VVVF音も違いは特にありません。
VVVF | MAP-158-75V303(3000V形)/303A(4000形)[1](1C4M) 三菱2レベルIGBT(ハイブリッドSiC)(DC750V・4極IM用) |
登場時期 | 2017年 |
パターン | 非同期-27P |
収録のしやすさ |
タイプ: 点検蓋 範囲: ★★★ 音質: ★★★ |
[1]青ォォ氏より情報提供
3000V形のVVVF音です。当時三菱のハイブリッドSiCは3レベルのものが主流でしたが、こちらは2レベルのものが採用されました。そのこともあってか、パターンは同社のフルSiC(2レベル)適用VVVFでよく採用されているものに準じ、非同期から3段階の27パルスへと遷移します。ただし、非同期キャリアは1000Hzと、フルSiCでよく用いられている1250Hzや1200Hzよりも抑えられています。現在管理人が把握している限りでは、ハイブリッドSiCで同期27パルスを採用しているのはこの車種のみとなっています。
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