VVVF名鑑

京急電鉄

傾向と対策

 京急は1500形からアルミ車体が採用されていましたが、ユニット車ではその間の配線付近で録音可能だったり、2100形までは点検蓋があったりある時期の車種まではコイルでの録音はできなくはない状況でした(詳細は各車種の解説にあります)。その状況が変化したのは新1000形からで、点検蓋が完全に廃止されてしまいました。しかし6次車からステンレス車体となったために再び録音が可能になりました。つまり、現在はよりによって一番録りたいシーメンス車に限って線間電圧由来の音が拾えないという、まさに痒いところに手が届かない状態でございます(2100形はすべて更新されてしまいましたし…)
 VVVFメーカーはシーメンスを除けば基本的には三菱か東洋ですが、東芝も細々と採用されています。

1500形・600形

最終更新日:2020.4.5

  京急1500形は1985年に1000形(初代)の後継車として登場しました。4・6・8連が組まれ、途中までは界磁チョッパ制御車として製造されましたが、1990年登場の1700番台(8連(6M2T)のみ)ではGTO素子のVVVFインバータが搭載されるようになりました。
 600形は1994年に地下鉄直通用のクロスシート車として登場しました。3次車までは1700番台の足回りがほぼそのまま踏襲され主電動機出力120kWで6M2Tの編成が組まれましたが、1996年登場の4次車では8連と初登場の4連で機器構成を共通化するためMT比が1:1となり、その分主電動機出力も180kWに増強されました。合わせてM車2両1ユニット方式を廃止したためVVVFインバータも新設計のものが採用されました。
 2006年から1500形の界磁チョッパ車において8連(6M2T)と4連(4M)を6連2本(4M2Tと6M)に組み替える作業が行われ、うち4M2T編成については出力が不足するためVVVFに更新されました。1700形製造終了から時間が経っていることもありこちらにはIGBT-VVVFが採用されました(のちに新1000形ステンレス車にも同様のインバータ・モーターが搭載されます)。4M2T編成についてこの改造が行われた後は前述の6M編成も2両を電装解除したうえで同様に改造したため、現在では6連車すべてが4M2T・VVVF制御となっています。
 モハラジオで録音する際の注意点としては、ユニットを組んでいる120kW車では点検蓋以外に各M車ユニット隣接部寄りの海側側扉付近でも録音でき、ノイズまみれになる点検蓋での録音に比べ篭りはするものの鮮明なVVVF音が聴こえます。一方で単独M車となる180kW車では点検蓋のみでしか音が拾えず、クリアな音は残念ながら収録できません(それでも辛うじてPWMのパターンはわかります)。1500形の更新車も元々直流モーター搭載だったため点検蓋がありますが、こちらは範囲が広いためかノイズの影響をそこまでは受けずに録音可能です。

東洋GTO・120kW

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF ATR-H8120-RG627A/B(1C8M)
東洋2レベルGTO(1500V・4極IM用)
登場時期 1990年(ソフト:1992年?)
パターン Y2G-3C 非同期-9P-5P-3P-広域3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 点検蓋
範囲: ★
音質: ★★

 東洋GTO車のうち、6M2T編成に所属し120kWの主電動機を搭載しているもののVVVF音です。該当するのは1500形が1701(廃車済)・7・13(デハ1715・16除く)・19・25編成、600形が601・3・5・6編成の電動車なっております。典型的なY2G-3Cの切替パターンで非同期音の途中で一回拡散がかからなくなります、つまり直通先の京成3700形ソフト更新車とほぼ同じパターンとなっています。なお、1701編成については登場当初は非同期音の拡散が途切れなかった(つまりY2G-3Bタイプ)という情報もありますが、自分が確認できた段階ではすでにこの音に変わっており、現在では残念ながら事故廃車となってしまいました。他の非同期音の拡散が一瞬途切れるタイプのうち最古であるものが東急1000系1C4M車(1991年登場)であり、ちょうど1701編成(1990年)と1707編成(1992年)の間となっているのでこの登場時の情報は本当である可能性が高いです。

東洋GTO・180kW

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF ATR-H4180-RG656A(1C4M)
東洋2レベルGTO(1500V・4極IM用)
登場時期 1996年
パターン Y2G-3D 非同期-9P-5P-3P-広域3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 点検蓋
範囲: ★★
音質: ★

 東洋GTO車のうち、180kWの主電動機を搭載しているもののVVVF音で、現在は653編成以外の600形4連が該当します。かつては608編成の半分でも聴くことができましたが更新時に651編成と装置の交換が行われ、現在は編成ごと三菱に統一されています。120kW車と比べると非同期音が加速時・減速時共に上昇量が抑えられ、Y2G-3Dの切替パターンとなりました。ただし非同期→9Pの切替タイミング(出力周波数基準)に変化はないため、やや間延びした音に感じられます。なおこちらの車種では点検蓋からしか録音できないためこのファイルのようにどうしてもノイズまみれとなってしまいます。
 余談ですが全盛期の東銀座駅・人形町駅ではY2G-3B(東急1000系/京成3700形ファミリーソフト未更新車)・3C(京急120kW東洋車/京成3700形ファミリーソフト更新車)・3D(京急608編成/東武20050系・20070系)の各タイプを聴くことができました。まさに「東洋GTO後期形のメッカ」という状態でしたがすっかり過去のものとなってしまいましたね…。

三菱GTO・120kW

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF MAP-128-15V31(1C8M)
三菱2レベルGTO(1500V・4極IM用)
登場時期 1992年
パターン 非同期-9P-5P-3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 点検蓋
範囲: ★
音質: ★★

 三菱GTO車のうち、6M2T編成に所属し120kWの主電動機を搭載しているもののVVVF音です。該当するのは1500形が1713編成のデハ1715・16と1731編成、600形が602・4・7編成の電動車なっております。この時代の三菱GTOらしく最初に上昇しやがて360Hzに到達するのですが、約253Hzと他に比べやや高い周波数から起動し(このときのインバータ周波数は2Hz固定)、さらに周波数の拡散が行われているので少しクセのある雰囲気となっています。周波数の拡散は新京成8900形も同様に行われていますが、京急車の場合は基準となる周波数が最初の部分で離散的に(階段状に)上昇しているみたいでますます独特に感じられますね。なおVVVF装置の筐体は東洋製と共通設計となっていると思われます、銘板くらいでしか区別ができません…。

三菱GTO・180kW

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF MAP-184-15V61(1C4M)
三菱2レベルGTO(1500V・4極IM用)
登場時期 1996年
パターン 非同期-5P-3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 点検蓋
範囲: ★★
音質: ★

 三菱GTO車のうち、180kWの主電動機を搭載しているもののVVVF音で、現在は653編成(4連)と608編成(8連)が該当します。こちらは東洋車に比べ明確に音が変わっており、三菱GTOの最末期に多い、終始非同期音が上がり続けるものとなりました。それでもやはり始動時(インバータ周波数2Hz時)の周波数は120kW車に揃えられてか約253Hzと高めになっており、最終的に到達する周波数も毎回変動するものの120kW車と近くなっております。また、このタイプでもその後に続くパルスモードは9→5→3→1が標準的なのですがこの車種は非同期がやや長いため9パルスモードが現れず、続く5パルスモードも少ししか顔を出しません。ここからさらに5Pを減らすとあの悪名高き都営6300形のパターンになります…。

機器更新車(三菱IGBT)

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF MAP-138-15V164(1C4M2群)
三菱2レベルIGBT(1500V・4極IM用)
登場時期 2006年
パターン 非同期-3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 点検蓋
範囲: ★★
音質: ★★★

 2006年に1500形界磁チョッパ車の更新用として登場した三菱IGBTの音です。800Hzを中心に標準的な拡散幅のランダム変調が適用されているため雰囲気は近鉄7020系やメトロ03系更新車に近いです。ただし非同期がやや長い分3Pが短くなっております。新1000形と違い起動時の瞬間の周波数とその後続く非同期音の周波数にずれがないため心地よく聞こえますね。

機器更新車(東洋IGBT)

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF ATR-H8155-RG694A-M(1C4M2群)
東洋2レベルIGBT(1500V・4極IM用)
登場時期 2007年
パターン Y2I-1B 非同期-9P-1P
収録のしやすさ タイプ: 点検蓋
範囲: ★★
音質: ★★★

 2007年に同じく1500形界磁チョッパ車の更新用として登場した東洋IGBTの音です。音としては2000年代後半の登場のためY2I-1Bグループの音となっています(2100形新1000形含め現在京急の東洋IGBTにはY2I-1Bタイプしかありません)。上の三菱車と違い0km/h付近まで音が途切れませんが、かといってこれが純電気ブレーキなのかは少々疑問ではあります。というのも東洋の純電気ブレーキの特徴として停止間際にそれまで減衰していた非同期音の音量が再び大きくなるというものがあるのですが、どうも京急の東洋IGBT車にはすべてそのような特徴がみられないのです。また、他社ですが京成3000形では純電気ブレーキ対応前でも停止後ドアが開くタイミングまで非同期音が鳴っていたそうで(音量増大はない)、京急で採用されている方式はむしろこちらに近いのかもしれません。ただいずれにせよ0km/h付近までは回生が効いているので、広く用いられている東洋流の純電気ブレーキとは作動方法が異なっていても広義の"電気停止ブレーキ"には含めても良いような気がします。

2100形

最終更新日:2018.10.16

 2100形は1998年に2000形の後継として快特用に製造されました。何と言っても海外製の部品を広く取り入れたことが特徴で、特に発車時に音階を鳴らすシーメンス製「ドレミファインバータ」はあまりにも有名で鉄道に興味のない人からでさえも認識されたVVVF音となりました。残念ながら更新とともにシーメンス製のインバータは取り替えられ、現在は全編成が東洋IGBTに換装されています。

機器更新車

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF ATR-H4190-RG6008A-M(1C4M)
東洋2レベルIGBT(1500V・4極IM用)
登場時期 2008年
パターン Y2I-1B 非同期-9P-1P
収録のしやすさ タイプ: 点検蓋
範囲: ★★
音質: ★

 現在の2100形のVVVF音です。1500形新1000形とは主回路構成や用いられているモーターが異なるため別のVVVFが使用されていますが、基本的には同じPWMのパターンが採用されています。ただしアルミ車体の2100形は点検蓋こそあるものの縁の幅が600形に比べさらに細められたためかもっと鮮明に録ることが難しくなってしまいました。こちらのファイルではノイズ除去が綺麗に行えず、特に非同期音の音色が本来のものから破壊されてしまいました。

新1000形(ステンレス車)

最終更新日:2018.10.17

 新1000形は2002年に登場しました。当初はアルミ車体に2100形譲りのドレミファインバータ、3次車からは「歌わなく」なったもののシーメンス製のIGBTが搭載されました。残念ながらこの形式から点検蓋が完全に廃止されてしまったためシーメンスのパターンをコイルで拾うことはできません。
 ところが2007年からステンレス車体に変わったため再びコイルで容易に録音することができるようになりましたが、搭載機器も一転して国内製のものに回帰しました。1500形更新車の機器をベースとして8連には三菱製、4・6連には東洋製のIGBTが搭載されています。
 2015年に増備された1367編成では京急で唯一PMSMが用いられておりVVVFも東芝製のものが採用されています。また8連車に関しては2016年度の1177編成から三菱製のフルSiC-MOSFETが用いられるようになりました。ただし、SiC車に関しては現在も自社線以外での運用が解禁されておらず、昼間は2000形の後釜として専ら南エア急の運用に入っています。

三菱IGBT

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF MAP-138-15V174(1C4M2群)
三菱2レベルIGBT(1500V・4極IM用)
登場時期 2007年
パターン 非同期-3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 8連のうち2007年登場の1073編成から2014年登場の1169編成までは三菱2レベルIGBTが搭載されました。機器は基本的に1500形に準じているはずなのですが、非同期音は100Hz下げられ700Hzとなり(東京メトロ10000系や名古屋市交6000形更新車、阪神1000系・5550系と同じ)、また加速時に関しては3Pの長さが長めに取られるようになりました。ただし、起動した瞬間は1500形と同じ周波数の音が鳴り、元は共通設計だったことが伺えます。
 しばらくは1500形同様純電気ブレーキは搭載されませんでしたが2013年登場の1161編成から採用となり、従来車も同様に改造されました。登場当初は京急独自のブレーキシステムに対応させることが難しかったのでしょうか…?(の割にそれ以前のシーメンスIGBTはすんなり対応させていましたね)

東洋IGBT

音声ファイル

解析画面

加速
減速

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF ATR-H8155-RG694A(orB)-M(1C4M2群)
東洋2レベルIGBT(1500V・4極IM用)
登場時期 2008年
パターン Y2I-1B 非同期-9P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 2008年からステンレス車にも4連が登場し、全M車となったことで話題になりましたが、その際ようやく東洋製の2レベルIGBTが新1000形にも搭載されました。その後1800番台や1600番台を含めた4・6連(PMSMの1367編成は除く)にも基本的にこの装置が踏襲され(一部部品を変更したことによる型番違いは存在する)、8連(三菱製)がSiCに切り替わった後も東洋製は現在もこのソフトを用いています。三菱製と異なり1500形のソフトが基本的にはそのまま用いられ、コイルで録音した音声にはせいぜい歯車比が違うことによる周波数が上昇するスピードのほんのわずかな差くらいしか表れません。
 京急の東洋IGBTは減速時1Pから9Pに切り替わる周波数の振れ幅が大きく、低いときは60Hz台くらいにもなるため普通運用でも減速時の1Pが比較的容易に出現します。参考に1ファイル目では92Hz、2ファイル目では63Hzがその切替点となっています。また東洋の9Pは架線電圧変動等にかなり敏感であるため、2ファイル目では加速時9P終了間際で1Pとの行き来を何回か繰り返しています。なおこちらも1500形同様当初から停止まで電制が効いているものの、やはり非同期音の音量が減衰後大きくなることはありません。なぜ京急だけ例外的な処理をしているのでしょうか、やはり空制含めたブレーキシステムが特殊なんですかね…?

1367編成

音声ファイル

解析画面

加速
惰行制御
減速
VVVF SVF102-G0(1C1M×4×2群)
東芝2レベルIGBT(1500V・6極PMSM)
登場時期 2015年
パターン 非同期-9P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 2015年登場の1367編成には東芝IGBT-VVVFとPMSMが取り入れられました。東芝はこれを量産型と位置付けているものの、現在までこの編成以外にPMSMは採用されておらず6連も次の1601編成から再び東洋IGBT搭載となっています。
 音はこの世代のPMSM用東芝IGBTの典型的なもので、750Hz・ランダム変調の非同期音(最初の数秒間は高周波重畳込み)の後は複数種類の9P、1Pが続きます。そしてある速度以上だとこのファイルのように惰行制御が行われます。惰行制御の始めでは周波数のぶれが繰り返し生じますが、段々とその周期が長くなりやがてなくなります。しかし制動へ移行する際再びこのぶれが出現します。なお他の新1000形と違い個別制御となっており、隣の群との周波数差による音の干渉を避けるためにもユニット端の台車の中でも車端寄りモーター直上での収録がおすすめです。

三菱フルSiC-MOSFET(ソフト更新前、消滅)

音声ファイル(加速)

解析画面

加速
減速
VVVF MAP-198-15V295(1C4M2群)
三菱2レベルMOSFET(1500V・4極IM用)
登場時期 2016年
パターン 非同期-27P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 8連は2016年の1177編成から三菱製のフルSiC-MOSFETにVVVFが変更されました。2017年の5月頃まではこのファイルのように同社製SiC-VVVFとしてはオーソドックスな1250Hzの非同期音となっていました。ただし京急車の場合3段階ある27Pのうち加速時非同期に続いて1段階目として現れるものが、減速時は現れず2段階目からそのまま非同期に突入することが多いようです。この特徴はソフト更新後にも引き継がれますが、ブレーキが緩いとき等はこの1段階目が現れることもあるようです。

三菱フルSiC-MOSFET(ソフト更新後)

音声ファイル(加速)

解析画面

加速
減速
VVVF MAP-198-15V294(1C4M2群)
三菱2レベルMOSFET(1500V・4極IM用)
登場時期 2017年(ソフト)
パターン 非同期-27P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 2017年5月頃より1178号車の非同期音が1両だけ試験的に変更され、その後すべてのSiC車に同様の改造が施されました。非同期音の周波数は800Hzとなり、結果として1500形の高さに回帰することになりました。ただし減速時のみ約900Hzから周波数が800Hzに下がるフェーズがございます。
 おそらく他社線内での誘導障害対策としてこのソフト更新は行われたものと思われますが、現在まで他社線への直通運用には充当されず昼間は新逗子までのエアポート急行に入らざるを得ない状況です。逆にいえば本数の割に狙いやすい音となっています。