VVVF名鑑

JR西日本

傾向と対策

 JR西日本の在来線VVVF車は、321系・225系に代表される0.5M方式であるか、そうでないかで収録における対策方法が大きく異なります。0.5M方式になる前の車両は207系0番台を除き1C1Mであるため、車体中心寄りモーター真上でコイルで録音すると車端寄りモーターの配線と干渉してしまいます。このため、必ず車端寄りモーターで実施しなければなりません(ここだと最大音量が小さくなる車種が多いですが)。また、223系の一部は3台しかモーターを搭載していない車両もあるため、注意が必要です。一方で0.5M方式の車両(125系を除く)は1C2Mであるため、干渉は気にしなくて大丈夫です。ただし、車種によってモーター搭載位置が異なるため、事前に調査して乗車しましょう。
 JR西日本は一形式に複数社のVVVFの搭載する傾向が特に強い事業者です。これに加えて一形式の製造期間が長く、更新前後も含むと同一形式内だけでもVVVFのバリエーションが相当数に上るケースがあります。当ページで形式ごとに章を分けると、「同一形式だけど異なる世代の装置が混在」「類似システムを複数形式に渡って搭載」というJR西日本特有の装置事情をまとめづらくなるため、独自の章立てとさせていただきます。

223系(三菱)

最終更新日:xx

1000番台

音声ファイル(加速)

解析画面

加速

音声ファイル(減速)

解析画面

減速
VVVF WPC7C(1C1M4群)
三菱3レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 1995年
パターン 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 1000番台の三菱IGBTは、1次車・2次車とも同じ磁励音となっています。
 非同期変調のキャリア周波数に関しては、営団の多くの形式や小田急2000形同様620Hzをしばらく保ちますが、その後これらの車種のように1000Hzまでは上昇せず830Hzで留まっています。ダイポーラ変調とユニポーラ変調の切替タイミングですが、キャリア周波数の上昇タイミングとは異なる判定基準を採用しているようで、特にこの車種では回ごとに顕著に変動する傾向があります。このため、減速時は状況次第でダイポーラ変調に切り替わったり切り替わらなかったりします。
 非同期→同期の切替えについては間に3パルスを挟まず1パルスになるためか、普通に聴く走行音では境界がわからず、スムーズに移行しています。この特徴は2000番台の三菱車にも引き継がれていますね。

2000番台(1次車)

解析画面

加速
減速
VVVF WPC10系列(1C1M3群または4群)
三菱3レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 1999年
パターン 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 2000番台1次車、およびこれを種車とする6000番台(2021年10月に原番復帰済)の三菱編成はこちらの音になっています。1000番台と比較すると非同期キャリアの設定が変化し、90年代後半からみられるようになった、起動直後からキャリア周波数がいきなり上昇するタイプとなりました。このタイプの音は後に多くのJR西日本の車種(207系2000番台・683系・521系、先に登場した285系はやや異なる)へと展開されることとなります。
 この1次車のみ回生ブレーキの失効速度が高い(インバータ周波数約8Hz)ため、減速時はダイポーラ変調へと切り替わりません。東芝は2次車登場後に1次車もソフト変更し、全車回生ブレーキの使用領域が広がったものの三菱は未施工のままとしています。ただし、稀に1両単位で2次車以降とソフトウェアの設定が(あるいは装置ごと?)入れ替わるようです。

2000番台(2次車以降)タイプ

解析画面

加速
減速
VVVF WPC13系列(1C1M4群)
三菱3レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 2003年
パターン 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 2000(6000)番台2次車以降、および同時期に製造された2500・5000・5500番台はこちらの音になります(代表して「2000番台(2次車以降)タイプ」と呼びます)。上の1次車と比較すると、加速時こそ変わりませんが減速時の電制有効範囲が広がり、ダイポーラ変調にまで到達するようになりました。これについて「純電気ブレーキ」とする見方もあるようですが、インバータ周波約2.5Hzで電制は切れるようなので微妙なところですね…無難に「回生範囲拡大車」と呼ぶのが良いのかもしれません。

223系(日立)

最終更新日:xx

1000番台(1次車)

解析画面

加速
減速
VVVF WPC7A(1C1M4群)
日立3レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 1995年
パターン H3I-1 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 1000番台のうち、1次車に搭載されている日立製VVVFによる音です。最初期の日立らしく、非同期領域全域にて極めて高い一定のキャリア周波数を使用しています。ただし、同時期に登場した他車種搭載の日立3レベルIGBTは軒並み1800Hzを使用しているのに対し、こちらは1650Hzと若干低くなっています。実際に乗車すると、非同期の音量はさほど大きくなく、同期モードへの切替も2次車以降と異なりスムーズに行われるため、223系のVVVFの中では2000番台東芝同様比較的静かな部類に感じます。

1000番台(2次車)

解析画面

加速
減速
VVVF WPC7A(1C1M4群)
日立3レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 1997年
パターン H3I-2 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 1000番台のうち、2次車に搭載されている日立製VVVFによる音です。この2次車で日立と東芝はVVVFの設計変更を行い、ハード面・ソフト面とも変化が表れています。日立車の音については同時期の他車種のように、ダイポーラ域とユニポーラ域で異なるキャリア周波数を用いるようになり、領域間では連続的にこの周波数の高さが変化します。また、非同期領域と1パルスモードの間には3パルスモードが追加されています。この3レベル用3パルスモードは後にいくつかの車種へと展開されますが、223系1000番台2次車のものはまだ「完成形」とは言えないようなもので、変調率の上昇に伴うスペクトルの変化の仕方がそれら車種とは異なっています。
 このVVVFが搭載された車両は、V5編成の電動車2両とW9編成の電動車1両の計3両のみでした。ただでさえ少数派であったのですが、V5編成は早々に体質改善工事が行われてしまったため、2022年12月現在は1両のみで聴ける非常に貴重なVVVF音となっています。

2000番台タイプ

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF WPC10系列(1C1M3群または4群)、WPC13系列(1C1M4群)
日立3レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 1999年
パターン H3I-2 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 2000(6000)番台、および同時期に製造された2500・5500番台はこちらの音になります(こちらも総称して「2000番台タイプ」と呼びます)。日立製VVVFについては1000番台2次車のものからさらにハード面・ソフト面とも設計変更が加えられました。音は一見1000番台2次車からさほど変化がないように感じられますが、目立つ違いとしては非同期領域内での500Hz→1000Hzへの変化させ方が挙げられます。1000番台では一定の率で変化していたのが搬送波の周期でしたが、2000番台ではこれが搬送波の周波数へと変わっています(このため、WaveTone上では「上に凸」の曲線を描きます)。また、3パルスモード内でのパルスの動かし方も変わり、こちらは他の日立製3レベルIGBTでもみられるようなものとなりました。
 この日立製VVVFについては2000番台2次車登場後も長らく回生失効速度が比較的高いままでしたが、2021年春~夏頃から順次次の1000番台更新車タイプの音へと変わっているようで、ようやく他社製VVVFと足並みを揃えてきた感じがあります。

1000番台更新車タイプ

解析画面

加速
減速
VVVF WPC13系列(1C1M4群)
日立3レベルIGBT(DC1500V・IM用)
登場時期 2019年
パターン H3I-2 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 2019年より1000番台の体質改善工事が始まり、VVVFは元々搭載していた装置に依らず一律日立製WPC13へと換装されています(ロングセラーですね…)。音についても基本的には上の2000番台タイプのものが採用されていますが、細かい変化点がありました。最大の違いは回生ブレーキの有効範囲であり、空気ブレーキへと完全に切り替えるタイミングがインバータ周波数約8Hzから約1~2Hzへと下げられています。また、架線電圧変動への追従方法が変わったためか、減速時1パルスモードの変調率が振れることが多くなりました。
 しばらくは1000番台のみにこのタイプが適用されていましたが、2021年に入ると既存の2000番台にも同様のソフトウェアが展開されるようになりました。