名古屋鉄道
傾向と対策
名鉄の営業用VVVF車は300系以降の通勤車はステンレス製、(特急車を含めた)それ以外の車両は普通鋼製となっているため全車種録音可能です。ただし、運用が広範囲に及ぶ車種が多く、少数派のものはやや狙いにくいです。1700系が引退した現在、機器更新が進んでいる3500系のGTO車や、1本しかいない200系を狙ってみたいですね。
100系・200系
最終更新日:2023.10.1
100系は地下鉄鶴舞線直通用の20m4扉車として1978年に登場しました。登場時は抵抗制御でしたが、1989年以降の増備車では界磁添加励磁制御を採用し、回生ブレーキの使用が可能となりました。1993年には6連化用の中間車2両が各編成に増結されましたが、内訳は従来通りのオールMではなくGTO-VVVF搭載M車+T車の構成となっています。そして、1994年に増備された最終編成は全M車ともVVVF制御の3M3Tとなり、形式も「200系」になりました。なお、それまでに増備された車両にも200番台の車号を持つものがありますが、これらはあくまで「100系200番台」という扱いであるようです。
2011年度より更新工事が行われ、抵抗制御車についてはIGBT-VVVF化・MT比1:1化も施行されました。これにより全車が回生ブレーキ使用可能となりました。
GTO車に関しては、PWM制御の種類が2タイプあることが確認されています。と言っても、キャリア周波数やパルスモードは同じであるため非常に気づきにくいです。本ページでは、モ161~166・モ261・215F各電動車が該当する「その1」と、モ262~264が該当する「その2」に分類いたします。
GTO車(その1)
音声ファイル
VVVF | MAP174-15V38(1C4M) 三菱2レベルGTO(DC1500V・4極IM用) |
登場時期 | 1994年 |
パターン | 非同期-9P-5P-3P-1P |
収録のしやすさ |
タイプ: 標準 範囲: ★★★ 音質: ★★★ |
モ161~166・モ261・215F各電動車が該当する音です(掲載音源は200系215Fのもの
)。三菱GTO後期型の中でも、非同期変調のほとんどの領域でキャリア周波数が単調増加(加速時)/単調減少(減速時)するタイプであり、同期変調は9P→5P→3P→1Pと切り替わる、非常にオーソドックスなパターンが用いられています。非同期キャリアの設定は上限が400Hz一定となっているようですが、この一定部分は加減速時の走行条件によって現れたり現れなかったりします。
このタイプは、非同期キャリア付近の上下に広がる線(側帯波)に関して明瞭なものが2本あります。また、このタイプの中でも、215Fの各電動車、および機器更新車と編成を組んでいるモ161~165は回生ブレーキがより低速域まで続く傾向があります(いずれもM車すべてがVVVFの編成に所属)。掲載ファイルでは停止間際にキャリア周波数が200Hzに到達した後は一瞬跳ね上がるような挙動を示しています。インバータ周波数は0Hz近傍にまで達していそうですが、純電気ブレーキかどうかは定かではないです。
GTO車(その2)
音声ファイル
VVVF | MAP174-15V38(1C4M) 三菱2レベルGTO(DC1500V・4極IM用) |
登場時期 | 1993年 |
パターン | 非同期-9P-5P-3P-1P |
収録のしやすさ |
タイプ: 標準 範囲: ★★★ 音質: ★★★ |
モ262~264が該当する音です。非同期キャリアの側帯波が2本はっきりしていた「その1」と比べると、こちらは4本明瞭であることがわかるかと思います(南海8300系のIGBT車とハイブリッドSiC車の違いと同様ですね)。また、9パルスモードのスペクトルにも違いがあります。どちらが先に登場したか、あるいはなぜ212F~214Fの増結車だけこのPWMが適用されているかは全然見当がつかないですね…。三菱製GTO-VVVFは初期(非同期なしのもの、9パルスモードで判断)も末期(新京成8800形・小田急1000形それぞれのソフト更新車)も「その1」と同様のPWM方式であるため、1990年代以降のものに存在する「その2」と同様のPWMは1つのオプションとして適用されているのかもしれません。いずれにせよ、名鉄100系・200系だけ両者が混在している状況が謎です…。
IGBT車
VVVF | MAP-174-15V236?(1C4M) 三菱2レベルIGBT(DC1500V・6極IM用) |
登場時期 | 2011年 |
パターン | 非同期-3P-1P |
収録のしやすさ |
タイプ: 点検蓋 範囲: ★★ 音質: ★★★ |
2011年に登場した、抵抗制御からIGBT-VVVFに換装された車両のVVVF音です。先に登場した4000系同様、三菱2レベルIGBT+6極IMの組み合わせとなっており、3パルスのおおよその長さやノッチオン時に非同期が入る点等、共通点も多いです。ただし、キャリア周波数や速度推定時の挙動は異なるようで、特に前者は1000Hzとなっているため同じ名古屋を走る市営地下鉄N1000形や2000形・5050形機器更新車と似た雰囲気になります。
3100系
最終更新日:2022.12.31
3100系は1997年、3700系とともに3500系のマイナーチェンジ版として登場しました。3500系にはなかった2両編成用のシステムを新規に設計する必要があったため、4連の3700系と違い足回りには個別制御(+SIVとのデュアルモード)・IGBT素子のものが新たに採用されました。制御装置のメーカーは三菱と東芝の2社となっていますが、三菱車は2015~2019年にかけてソフトの更新が行われ、音が変化しました。また、2019年より併結することの多い2200系に準じた塗装への変更が行われています。
東芝
音声ファイル
音声ファイル(減速時ユニポーラ変調戻り)
VVVF | SVF032-A0/C0(1C1M4群) 東芝3レベルIGBT(DC1500V・4極IM用) |
登場時期 | 1997年 |
パターン | 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-1P |
収録のしやすさ |
タイプ: 標準 範囲: ★★★ 音質: ★★★ |
東芝車のVVVF音です。キャリア750Hzのダイポーラモードから1500Hzのユニポーラモードに切り替わり、同期は1パルスのみという、同時期に同様の主回路システム(個別制御+デュアルモード)を採用した223系1000番台2次車とそっくりなパターンが採用されています。この後の世代の3レベルIGBTはランダム変調が適用されるようになったため、このタイプは少数派に留まりましたが、その割に認知度の高い音といった印象がありますね。
2番目のファイルでは、減速時ユニポーラからダイポーラに切り替わった後、なぜか一瞬だけユニポーラに戻ってしまっています。残念ながら該当編成の番号を記録し忘れてしまったのですが、録音時この車両は終始このような挙動を示していました…。
三菱(ソフト未更新車(前期タイプ?))(消滅)【たろいも氏からの頂き物】
音声ファイル(ノッチオフ中省略)
VVVF | MAP-174-15V66A(1C1M4群) 三菱3レベルIGBT(DC1500V・4極IM用) |
登場時期 | 1997年 |
パターン | 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-3P-1P |
収録のしやすさ |
タイプ: 標準 範囲: ★★★ 音質: ★★★ |
2019年に消滅したソフト更新前の三菱車のVVVF音です。管理人は録音できなかったのですが、有難いことに長年お世話になっているたろいも氏が音源を提供してくださったので、こちらを掲載させていただきました。キャリア周波数が最初にいきなり上昇し、その途中でユニポーラモードへと切り替わるという、同社製3レベルIGBTの中でも90年代末期によくみられた非同期変調が採用されていました。ソフト更新後は別物の音となっていますが、一部にこの面影を残しています。
「前期タイプ?」と書いたのは、3次車の一部(3122F・3123F?)は当サイト掲載の1700系(1704F)と同じパターンであったという証言があるからです。今となっては検証不可能となってしまいましたが、3100系と1700系合わせて考えたときに、未更新車の中に2タイプのPWMパターンがあったのは間違いないです。
三菱(ソフト更新車)
VVVF | MAP-174-15V66A(1C1M4群) 三菱3レベルIGBT(DC1500V・4極IM用) |
登場時期 | 1997年(当パターン:2015年) |
パターン | 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-3P-1P |
収録のしやすさ |
タイプ: 標準 範囲: ★★★ 音質: ★★★ |
ソフト更新後の三菱車のVVVF音です。理由は不明ですが、非同期キャリアは約178Hz~550Hzと、掲載している1700系の値をほぼ半減したものが用いられるようになりました。ただし、3パルスモードがある点は上の3100系ソフト未更新車に準じています。また、521系3次車以降のように、非同期領域は全域ダイポーラ変調に変化し、1パルスモードの最大変調率も引き上げられました。同じく東芝も3レベルIGBTにおいて、非同期領域内での変調方式切替を3300系後期車でなくしていますが、向こうは全域ユニポーラにしているので真逆のやり方となっています。
1700系
最終更新日:2021.4.30
1700系は、1999年に1600系として登場しました。当初は3連であり、足回りは3100系をベースに1M2T・特急車性能に対応させていました。1000系列とともに「パノラマSuper」として活躍していましたが、2008年に2330番台の車両と編成を組み直すことになり、モ1700形-サ1650形は1700系へと改造されました。なお、編成から外されたク1600形はすべて廃車となっています。その後塗装変更が行われ、1600系時代を彷彿させるデザインとなりましたが、2330番台との相性が悪かったせいか2019年より2200系の特別車への置き換えが始まりました。2020年に一足早く三菱車が置き換えられ、残る東芝車も2021年2月に引退しました。
東芝(消滅)
音声ファイル
VVVF | SVF032-B0(1C1M4群) 東芝3レベルIGBT(DC1500V・4極IM用) |
登場時期 | 1999年 |
パターン | 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-1P |
収録のしやすさ |
タイプ: 標準 範囲: ★★★ 音質: ★★★ |
東芝車のVVVF音です。3100系の同タイプとはパターン自体に違いはなく、VVVF領域の長さがこちらの方が長いことくらいしか差がありませんでした(もちろん、普通に聴く走行音はギヤ比の違い等が現れます…個人的には1700系の方が好み)。モハラジオで収録できる音は、こちらの方が高周波帯の成分がより減衰する形となります。
三菱(後期タイプ?)(消滅)
音声ファイル
VVVF | MAP-174-15V78(1C1M4群) 三菱3レベルIGBT(DC1500V・4極IM用) |
登場時期 | 1999年 |
パターン | 非同期(ダイポーラ)-非同期(ユニポーラ)-1P |
収録のしやすさ |
タイプ: 標準 範囲: ★★★ 音質: ★★★ |
一足先に消滅した、三菱車のVVVF音です。三菱車の場合、発車時に編成全体が動き出してから(=2330番台の車両が先に起動してから)少し後にモ1700の音が鳴り始めていたように、明瞭に2330番台と挙動に差があったので相当扱いにくかったと思われます(これが東芝車より先に葬られた理由かもしれません)。上に掲載している3100系未更新車の音と比較すると、起動時のキャリア周波数や3パルスモードの有無に違いがあります。もっとも、3100系の解説でも述べたようにこの違いは3100系と1700系の違いではなく、3100系前期車(~3121F)・1703Fと3100系後期車(3122F~)・1704Fの違いであるという説もあります。
4000系
最終更新日:2020.6.7
2008年に、瀬戸線の従来車を全面的に置き換えるため登場しました。3300系をベースとしつつも、前面デザインや足回りへの全閉6極IM採用等、独自色の強い車両となっています。現在は瀬戸線で4連18本が活躍中です。
音声ファイル
VVVF | MAP-178-15V192?(1C4M2群) 三菱2レベルIGBT(DC1500V・6極IM用) |
登場時期 | 2008年 |
パターン | 非同期-3P-1P |
収録のしやすさ |
タイプ: 標準 範囲: ★★★ 音質: ★★★ |
4000系のVVVF音です。6極IM採用(ただし、3300系試験車の東芝製に対しこちらは三菱製)のため、普通に聴ける音は前年に登場した同じ歯車比・駆動方式の小田急の方の"4000"に近いです(もっとも、これは小田急が歯車比5.65等、名鉄標準の仕様に寄せた感あり)。ただし、非同期キャリア(小田急の750Hzに対し800Hz)・速度推定方式・3パルスの長さ・ノッチオン時の挙動(名鉄は非同期あり)等、コイルで録音するとそこそこ違いが見えてきますね。三菱がどのようにこれらのパラメータを設定しているのか気になります。
9500系・9100系
最終更新日:2022.12.31
9500系は2019年に登場しました。4連を組み、先代の3300系をベースとしていますが、全車へのフリースペースの設置やWi-Fiの搭載等、サービスの向上が図られています。2020年には2両編成版の9100系も登場しました。VVVFは9500系が東芝製、9100系が三菱製となっています。
9500系
音声ファイル
VVVF | SVF106-C0(1C2M2群) 東芝2レベルIGBT(ハイブリッドSiC)(DC1500V・4極IM用) |
登場時期 | 2019年 |
パターン | 非同期-15P |
収録のしやすさ |
タイプ: 標準 範囲: ★★★ 音質: ★★★ |
9500系のVVVF音です。キャリア周波数の設定から、速度推定時の挙動や15パルス内でのPWMの切り替わり方まで、先に登場した西鉄9000形にそっくりです。ただし、向こうは21パルスが現れるケースがあるものの、こちらは現れないようで安定的に非同期と15パルスが切り替わります。
余談ですが、3300系後期車に積まれている3レベルIGBT-VVVFの型番はSVF106-B0、2レベル・ハイブリッドSiCの当形式のものはSVF106-C0となっています。仕様が相当異なるにも関わらず、型番はサフィックス違いのみとなっているのが意外に感じられます、近年の東芝の付番方式は掴みづらいですね…。
9100系
音声ファイル
VVVF | MAP-174-15V342[1](1C2M2群) 三菱2レベルIGBT(ハイブリッドSiC)(DC1500V・4極IM用) |
登場時期 | 2020年 |
パターン | 非同期-15P-広域3P |
収録のしやすさ |
タイプ: 標準 範囲: ★★★ 音質: ★★★ |
[1]みゅ?の空。氏のツイートより
9100系のVVVF音です。装置は三菱製ですが、9100系登場時に仕様変更の発表が特にされなかったことから、9500系同様ハイブリッドSiCであると考えられます。非同期変調は先代の3300系同様「竜巻インバータ」のタイプとなっていますが、営業運転前の試運転の間に起動直後・停止寸前のキャリア周波数が変更され、前者は300Hz、後者は600Hzとオクターブ違いとなったことが特徴的ですね。一方の同期変調については、三菱のフルSiCの車種と違い15パルスの過変調を用いているようです。この15パルスもフルSiCの27パルス同様数段階に分かれていますが、特に比較対象がないということもありここでは段階ごとの表記を省略し、最後段のみ実質同じ波形となる「広域3P」の表記とします。三菱では他に都営6500形で似たパターンを採用していますが、この過変調の方式自体は日立がモハ321-14で使用しているものと近いようです。
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