VVVF名鑑

新京成電鉄

傾向と対策

 新京成電鉄の車両は8800形までは普通鋼製、8900形以降はステンレス製となっているため全形式コイルでの録音が可能です。ただし、普通鋼製の8000形8800形は少しだけ収録難易度が高いです(詳細は各形式の項参照)。駅数が多く、全列車普通運用であるため1回乗りに行けば容易に数種類の音を収録することができると思います。

8800形

最終更新日:2022.12.31

 1986年に、関東の直流1500V路線では初のVVVFインバータ量産形式として登場しました。8連12本が製造され、新京成の最多形式となりましたが、2006年~2013年にかけて6連16本に組み直され、先頭車化改造車も登場しています。そして一部編成は京成千葉線への乗り入れにも対応しています。
 足回りについては、1999年より全編成へのベクトル制御化や純電気ブレーキ化が行われ、GTO素子は据え置きであるもののPWMのパターンが変化しました。また、2016年から機器更新が開始し、フルSiC適用VVVFインバータへの換装が進められていました。ところが、方針転換により2022年度からは80000形への置換えが始まっています。
 未更新車も更新車もリスニングスポット自体は広いのですが、車体構造故か収録できるのはやや篭ったような音となります。

機器未更新車(GTO・ソフト更新車)

解析画面

加速
減速
VVVF MAP-148-15V06(1C2M2群)
三菱2レベルGTO(DC1500V・4極IM用)
登場時期 1986年(当パターン:1999年頃)
パターン 非同期-9P-5P-3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 GTO車のソフト更新後のVVVF音です。GTO最終期に登場した名鉄100系・200系に準じたパターンで、ゆっくりキャリア周波数が上昇する非同期変調の後に9P→5P→3P→1Pと遷移します。ただし、そのキャリア周波数はこのタイプにありがちな高さよりも低めとなっており、9パルスと滑らかに繋がるような処理が行われています。2年後に同様の改造が行われた小田急1000形(ソフト更新車)とは(1)速度推定モードあり(2002年頃に後付け?) (2)インバータ周波数(&紐づいているキャリア周波数)固定起動ではない (3)停止時のキャリア周波数が200Hz一定、といった点で区別可能です(特に(3)がわかりやすいですよね、先に純電気ブレーキが導入された8900形と合わせたのでしょうけど、後年登場する日立の全電気ブレーキ時のものにより近い響きとなります)。
 一点興味深いのは、回生立ち上げ時のみ広域3パルスが登場するといった点です。力行立ち上げ・力行立ち下げ・回生立ち下げのときには現れないので、回生立ち上げのときだけよほど特殊な事情があるのではないかと勘ぐってしまいますね。

機器更新車(フルSiC)

解析画面

加速
減速
VVVF MAP-184-15V291(1C4M1群)
三菱2レベルMOSFET(DC1500V・4極IM用)
登場時期 2015年
パターン 非同期-27P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 機器更新車のVVVF音です。後に登場する80000形と異なり、キャリア周波数が1250Hzの非同期変調から3段階の27パルスに変化する、至ってオーソドックスな三菱フルSiCのパターンが採用されています。このファイルのように、減速時は低周波域にざらついた音が入ることが、なぜかそれなりの頻度であるようです。

8900形

最終更新日:2022.12.31

 8900形は1993年に登場しました。8800形に続き新機軸が盛り込まれた形式で、高速電車用としては初のシングルアーム式パンタグラフ採用、および日本初の純電気ブレーキ採用(ただしすべり周波数制御方式)等がなされました。デビューから8連で活躍していましたが、2014年から2018年までの間に全編成6連化・GTO→IGBT化・新デザイン化が行われました。なお、この際に搭載したIGBT-VVVFは8000形廃車時のものの流用品とみられています(明確なソースはないものの、状況証拠的にはほぼ間違いないため以降その体で解説いたします)。6連化後の現在も、京成線には乗り入れず自社線内のみで運用されています。

GTO車(消滅)

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF MAP-148-15V37(1C8M)
三菱2レベルGTO(DC1500V・4極IM用)
登場時期 1993年(純電気ブレーキ化:1998年)
パターン 非同期-9P-5P-3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 2018年に消滅したGTO車のVVVF音です。この時期の三菱GTOによく見られる、非同期変調のキャリア周波数が最初に上昇した後一定に落ち着くパターンですが、京急1500形・600形(1-3次車)同様にランダム変調が用いられているのが特徴的です。ただし、こちらは京急車に比べるとより連続的に音が上昇しています。また、始動時(インバータ周波数2Hz固定時)のキャリア周波数は約218Hzですが、純電気ブレーキを用いた停止時は200Hzまで下がります。この200Hzという周波数は、その後の8800形(ソフト更新後)や、日立の全電気ブレーキ搭載車(2010年代中盤頃まで)にも用いられるようになります。後者に関しては制御の方式が異なりますし、たまたまなのでしょうけど…。

IGBT車

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF MAP-168-15V189(1C4M2群)
三菱2レベルIGBT(DC1500V・4極IM用)
登場時期 2014年
パターン 非同期-3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 2014年からGTO→IGBTへの換装が行われました。登場してから間もない8000形更新時の装置が流用されていて、非同期変調のキャリア周波数やパルスモードのパターンは8000形時代のものを踏襲しています。ただし、主電動機は元々搭載していた4極のものを継続使用することとなったため、これに応じたソフトの仕様変更が行われています。例えば当サイト掲載ファイル内だけで比較すると、加速時の非同期→3P切替えがインバータ周波数70Hz時→50Hz時、3P→1P切替えがインバータ周波数81Hz時→58Hz時にそれぞれ変更されています。同じインバータ装置のまま4極・6極両方の主電動機に対応させた小田急3000形・8000形でも同様の措置が取られていましたね(向こうは4極→6極への載せ替えですが)。

N800形

最終更新日:2023.5.21

 京成千葉線への直通に備え、2005年に登場した形式です。新京成の車両としては久しぶりに京成車(3000形)ベースのものとなり、足回りもほぼそのままであるため2020年現在唯一東洋製VVVFを採用した形式となっています。第1編成が登場した後も細々と増備が続き、2018年まで5編成が出揃いました。その間に"本家"3000形はソフト更新が行われ非同期変調領域の拡大がなされましたが、N800形には今のところ展開されてはいません。

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF RG692-A-M(1C4M2群)
東洋2レベルIGBT(DC1500V・4極IM用)
登場時期 2005年
パターン Y2I-1B 非同期-9P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 N800形のVVVF音です。基本的には同時期に登場した京成3000形ソフト未更新車(後期タイプ)と同じですが、細かい点に着目すると違いがあります。具体的には当時の京成/北総/千葉NT車は停止後もしばらく非同期変調の音が鳴っていたのですが、新京成車はこれらのソフト更新後同様停止とほぼ同時に音が切れています。なぜこのような違いが生じたのかは不明ですが、京成車は一時期電気停止ブレーキを無効化していたこともあり、その前後で調整が入ったのではないかと思っています。なお、京成/北総/千葉NTからは後期タイプのソフト未更新車は消滅してしまった(後に3008編成・3009編成・3014-2号は似た音に変化、ただし電制の長さはN800形と同様)ようですが、新京成車については全編成ともこのタイプで活躍中のようです。

8000形(消滅)

最終更新日:2022.12.31

 1978年に登場しました。当初は抵抗制御でしたが、1981年の8506編成から界磁チョッパ制御となりました。全編成6連で製造され、2006年からは京成千葉線への直通運用にも充てられるようになりました。その後VVVFインバータへの改造が行われましたが一部編成に留まり、未更新の編成から置き換えが行われました。その後VVVFインバータに更新された編成も廃車対象となり、最後まで残った8512編成も2021年11月に引退しました。なお、一部編成の装置は8900形に流用された模様です。
 モハラジオでの収録は可能でしたが、スポットが狭いうえに音量も小さく、ノイズも避けられないのでなるべく綺麗に録るためには最初に多くに範囲を探索する必要がありました。ただし、一度スポットを見つけてしまえば後は苦労せずに録音できました。

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF MAP-168-15V189(1C4M2群)
三菱2レベルIGBT(DC1500V・6極IM用)
登場時期 2008年
パターン 非同期-3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★
音質: ★★

 8000形更新車のVVVF音です。この時期にしては珍しく、いわゆる"竜巻"タイプの非同期キャリアが用いられました。ただし、周波数の変化量は550Hz→800Hzと控えめです(550Hzスタートの竜巻タイプといえば東急300系も該当しますね、また6極用で800Hzのキャリア周波数は名鉄4000系でも聞かれます)。停止時はインバータ周波数2Hz程度で回生失効していましたが、それでも「純電気ブレーキ」の範囲に入るものと思われます。
 余談ですが、当形式は三菱製VVVFで東芝製全閉・6極モーターを制御している一方で、小田急50000形は東芝製VVVFで三菱製全閉・6極モーターを制御しています。全閉・6極モーターの黎明期であった当時、どのようにして普及が進められていたかに関して、この点を踏まえてみても興味深いですね。

80000形

最終更新日:2022.12.31

 2019年に登場した新京成の最新形式です。先代のN800形同様、京成車ベースの設計となり、今回は3100形を元にしています。ただし、足回りについてはN800形のときと異なり完全オリジナルとされ、先に8800形機器更新車で採用された三菱製フルSiC適用VVVFが本形式にも搭載されることとなりました。装置の筐体はこれまでの三菱製とは大幅に異なるものとなり、音も独特のものとなっています。2022年現在は6連2本が在籍中です。

解析画面

加速
減速
VVVF MAP-168-15V331(1C4M)
三菱2レベルMOSFET(DC1500V・4極IM用)
登場時期 2019年
パターン 非同期-27P
収録のしやすさ タイプ: 標準
範囲: ★★★
音質: ★★★

 80000形のVVVF音です。同じフルSiCの8800形とは異なり、500Hz一定から途中で上昇する、まるで733系のような非同期変調が採用されています。一方で同期変調はれっきとした三菱SiCといったパターンで、3段階の27パルスで構成されています。ただし、1段目→2段目および2段目→3段目の切替えが8800形と比べるとやや不明瞭となっています。同様の傾向は小田急の最新形式5000形にもみられるようです。