VVVF名鑑

東京モノレール

傾向と対策

 東京モノレールのVVVF車はアルミ車体ですが、他の国内の跨座式モノレール同様車内に点検蓋があるため、コイルでの録音は可能です。点検蓋は車端部の床が高くなっている部分にあり、1両につき計8箇所と他のモノレールよりも多く存在します。ただし、ブツッというノイズが常に入る箇所とそうでない箇所があり、点検蓋によって当たり外れの差が大きいです(もっとも、この手のノイズを避けることが難しい他のモノレールに比べれば良心的です…)。傾向として、進行方向で見たときに前から2番目と4番目の点検蓋だとノイズが入りにくいように感じますが、必ずしもこの法則が当てはまるという保証はないので、数箇所で試してみるのが一番確実です。ということで、録音したい場合は人や荷物が少なく停車駅の多い普通運用を狙いましょう。

2000形

最終更新日:2022.12.31

 2000形は1997年に登場しました。750V規格で素子の耐圧に問題がなかったからか、当時としては珍しく2レベルIGBTが採用されました(国内での先例はやはり架線電圧の低い札幌市交通局5000形くらい)。1997-98年に2011F-2031F(第1-3編成)、少し間を空けて2002年に2041F(第4編成)が登場しましたが、その後は増備されることなく少数派に留まりました。登場から時間が経過したためか、修繕の一環として(?)近年ソフト更新が行われ、現在は全編成ともPWMのパターンが変わっています。

ソフト未更新車(消滅)

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF VFI-HR4810A(1C2M4群)
日立2レベルIGBT(DC750V・IM用)
登場時期 1997年
パターン H2I-1 非同期-1P
収録のしやすさ タイプ: 点検蓋
範囲: ★★
音質: ★★

 ソフト更新前の2000形のVVVF音です。更新時期にまだ差し掛かっていなかった(?)2041Fのみしばらくこの音でしたが、2021年頃には他編成同様の音となり、現在は聞くことができません。2レベルIGBTですが、まだ普及し出す前の時代の仕様のためか、後にスタンダードとなるものと異なる点がいくつか見受けられます。まず、広域3パルスがないことがぱっと見でわかります。これはE231系900番台や近鉄シリーズ21(日立車)等、2000形の次くらいに登場する日立2レベルIGBT車の一部でもみられる特徴ではあります。次に急上昇部分に注目すると、キャリア周波数は一定の割合では増加せず、京王1000系や731系等、この時期の3レベルIGBTのように下に凸の放物線を描きながら上昇しています。2レベルでこの特徴があるのは当形式のみと思われます。そして非同期変調前半のキャリア周波数は1060Hzと、他ではみられない値となっています。一般的な1050Hzと、都営大江戸線の一部車両(12-000形や12-600形3次車以降)で用いられている1070Hzの、ちょうど間となる値ですね。

ソフト更新車

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF VFI-HR4810A(1C2M4群)
日立2レベルIGBT(DC750V・IM用)
登場時期 不明(2015-16年頃?)
パターン H2I-2 非同期-広域3P-1P
収録のしやすさ タイプ: 点検蓋
範囲: ★★
音質: ★★

 ソフト更新車のVVVF音です。といっても、普通に聴いているとほとんど違いがわからないレベルの変更内容であるため、残念ながらいつ頃からこちらの音が登場したかについて正確な情報がありません(調べた限りでは2015年頃が怪しいです)。しかし、こうしてコイルで録音することで明確に異なるPWMに変更されたことがわかります。
 代表的な変更箇所は4つあり、①非同期変調(一定部分)のキャリア周波数が1060Hz→1050Hzになる、②急上昇部分においてキャリア周波数が一定の割合で増加する、③広域3パルスが追加される、④停止間際まで回生ブレーキの領域が拡大される、がその内容となっています。①-③が適用されたことで東京メトロ7000系(日立2レベルIGBT・160kW車)や303系とほぼ同様のPWMパターンとなりました。ただし、これら2車種は京王9000系のように、加速時においてキャリア周波数が1800Hzに達するタイミングと広域3Pに切り替わるタイミングが別個に設定されているのに対し、2000形では一致しています。また、④は全電気ブレーキ相当の速度(インバータ周波数が0.数Hz)まで、キャリア周波数を(1050Hzから)下げずに行なっています。日立製インバータを搭載した車両であっても、他のモノレールの一部車種や札幌市交8000形(日立2種)でもこの特徴はみられます(すべてゴムタイヤですね…?)このことは、日立製VVVFについて、全電気ブレーキ相当のインバータ周波数まで電制が継続することと、当該領域にてキャリア周波数を下げる設定になっていることは必ずしもセットではないことを示しているとも言えるでしょう。

10000形

最終更新日:2020.6.16

 10000形は2014年に1000形置き換え用に登場しました。車体こそ2000形ベースですが、LED前照灯や車内LCD等新機軸が盛り込まれました。主回路については引き続き2レベルIGBTが用いられていますが、2000形とは異なる装置が採用されています。2022年現在は8本が在籍しています。

音声ファイル

解析画面

加速
減速
VVVF VFI-HR4810B(1C2M4群)
日立2レベルIGBT(DC750V・IM用)
登場時期 2014年
パターン 非同期-9P-1P
収録のしやすさ タイプ: 点検蓋
範囲: ★★
音質: ★★

 2014年登場の日立IGBTらしく、非同期変調には525Hz・ランダム変調のキャリア周波数が用いられています。また、減速時の停止間際ではキャリア周波数が連続的に降下します。ただし、この時期の同社製新規設計VVVFにしては珍しく、過変調領域において非同期キャリアの急上昇が行われています…かと言ってこれまでの車種のように1800Hzや1500Hzまでは上昇せずに、1080Hzで同期モードに切り替わります。そして、その同期モードはこの時期のものらしく9パルスであるものの、E531系同様別途用意された広域3パルスには切り替わらず、変調率が上がり切らないまま1パルスにそのまま移ります。
 ここまででも充分特異な挙動を示していますが、さらにノッチオン/ノッチオフに着目すると非同期キャリアはこのように遷移せず、代わりに1500Hz一定のもので置き換えられます(ただし、ある速度以上において。低速域での挙動は現状説明不可能です、各自で録音して解析してみてください…)。このように、数ある日立2レベルIGBTの中でも、最も例外的と言っても過言ではないPWMのパターンが用いられています。